突然のブログ復活ですが・・・

ひょんなことから、「日本の博物館はなぜ無料でないのか?」というtogetterを作ってしまいました。
http://togetter.com/li/256778

ところが、字数制限があるので、せっかく手入力した資料をコメント欄に書き込むことができず、久々にこのブログを利用することにしました。この1年、色々あったのですが、それは置いておいて。
『博物館研究』バックナンバーから法制定当時の回顧録を抜き書きしてみました。

この回顧録から、博物館入館料“無料”は、以下の理由で“原則として”の但し書きがついたと推測できます。
1)動物園協会から「無料では絶対にやっていけない」と反対があった。
2)広く一般に提供する点では、無料が好ましいが、研究調査機能を考えたら、無料では機能が止まってしまう。
3)有料にするのは、一種の入場者の整理(制限)策でもあった。

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「博物館法制定10周年記念座談会」1961年11月15日 東京国立博物館にて開催
司会:鶴田総一郎、出席者:内田英二、岡部稔成、鬼山信一、古賀忠道、近藤春文、三浦勇助
 (社団法人日本博物館協会『博物館研究』1961年12月号、6−12頁)以下、引用
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古賀 動物園、植物園、水族館を入れるということが相当問題になったようですね。


近藤 あの時は教育委員会制度が発足したばかりであった。その為所管の問題で、法律の中に教育委員会の所管をうたうと大部分のものがはねられてしまう。そこで一番問題になったのは動物園協会からである。教育委員会所管になると動物は死んでしまうとして反対した。(略)


古賀(略)先の話の動物園協会の反対の一つは、“入場無料”という項をそのままとり、無料では絶対にやっていけない、つぶれてしまう。即ち“原則として”というのをそのまま受けてしまった。もう一つは何か制約をうけたり干渉をうけたりするのではないかと感じたらしい。その点を大いに説明したのだが、仲々わかってもらえなかった。あと一つは所管の問題があった。


内田 それは大いに問題になりましたね。教育委員会の所管になったら予算などとれないというわけで・・・・・・。


近藤 “原則”というのは非常に苦労した。金が入るわけではなく、金をとれば博物館法が示す広く一般に提供することに反し、また研究調査を考える場合、図書館法のように無料でやることはあり得ない。同時に動物園でも学習のつながりということで研究室的な共同実習所という教育の場を作ることも必要である。とすると実習費も必要となる。それで“無料”という線を出すことは好ましいことは好ましいが機能が止まってしまうのではないか、ということで不可能であり、そこで“原則として”としたのです。


鬼山 徴集してはならない。但しやむを得ない場合はということで、今ではやむを得ない場合が普通になっているのですね。


内田 しかし、その精神を汲んで安いには安い。


近藤 料金をあげないというところが、そういう点から来ているのですね。


鶴田 一種の入場者の整理であって、入場料ではないのですね。


近藤 サービス料というか助言料というかそういうものですね。


鶴田 当時上野の山もまだひどかったが、あの人達が入れない様にする理由にもなったのではないですか。


近藤 図書館法の時に問題になったのだが、図書館法は無料である為に図書館を利用しない人のたまり場になり、閲覧しようとする人々の空気や雰囲気を乱したり、同時に騒音をたて邪魔をするという悩みがあった。単なる一つの休憩所ではないということですね。


岡部 入場料の問題が出ましたが、今の物価からいけば博物館の入館料はほんのただのようなもので、公立で一番高いのは50円程度、法人では100円ですが、これは全国でも2,3きりで、あとは殆ど50円どまりです。

(以下、略)

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手入力後、きちんと原本と照合していませんので、引用の際は、原本をご確認下さい。