大橋学長の衝撃

 日本社会教育学会の六月集会で、東京に来ている。会場は、日本社会事業大学
 今日のプログラムは、プロジェクト研究「教育法体系の改編と社会教育・生涯学習」と、特別シンポジウム「職員問題に関する提言」。→http://wwwsoc.nii.ac.jp/jssace/taikai/taikai08-1.html
 前半、フロア最後列から、元気のいい方が発言された。「研究の枠組みを変えないとまずい。政策が出てくる背景に鈍感だ。委員会の中で政策提言をして、国の政策に反映させないとダメだ。学会は評論していないか。自治体レベルの政策、権利を造ることが大事だ。空中戦だけでは、ダメだ。住民と一緒になって計画作りをしなければ」と言った旨のご発言だった。
 この元気な方はどなただろうと思ったら、なんと、会場を提供して下さっている日本社会事業大学学長の、大橋謙策先生であった。
 後半の特別シンポの最後に、さらに大橋先生の爆弾発言があった。後半のシンポでは、学会内部の職員問題特別委員会が出した「知識基盤社会における社会教育の役割(提言案)」についての話し合いが行われたのだが、最後に、大橋先生が前に出て、ご意見を言われた。私は福祉の世界のことを知らないので、ご発言の背景は分からなかったが、特に驚いたのは、以下のような内容だった。

 全体の論議が甘い。学問の自由とか言いながら、自分勝手なことをやりすぎているのではないか。職能団体の組織化が必要で、自分たちの仲間内で言っていてはダメだ。(福祉の分野では、日本学術会議で対外報告書を出してもらった。(そのためには)他分野の人を納得させる必要がある。今回の提言は、誰宛に出すのか? 国民にか? 文科省にか? 都道府県に出すのか?
 福祉の分野では、団体を統合して、知事宛や、教育委員長宛に(送っている)。スクールソーシャルワーカーの配置は、退職校長と、社会福祉士と、臨床福祉士との(取り合いで、社会教育職員はその中に入っていない)。社会教育学会は、評論ばかりやっていて、動かない。ディレッタンティズムの研究ではダメだ。大学でも、社会教育主事養成の講座がなくなった大学もあるのではないか? ソーシャルアクションを興さなければダメだ。ニーズキャッチを誰がやるのか? 専門職養成の財源は、どこから持ってくるのか? 行政だけではダメで、アウトソーシングの論理にしてもいい。独立型社会福祉事務所のような。専門職って、そういうものでしょう? (これでは)社会は動かない。もっと本格的な議論を、真剣に考えていただきたい。
 うちの大学には専門職大学院があるが、80人定員で13人の教員を抱えている。一人1,000万円として、1億3,000万円かかるし、現場の人も呼ばなければならない。院生1人当たり、200万円授業料を貰わないとやれない。専門職大学院というが、経営が成り立つのか?

 メモの復元なので、正確ではないかもしれないが、強烈なインパクトだった。学芸員養成に関しても、大学院での養成という話が法改正問題の中で議論されていたが、博物館関係者の中で、ここまではっきりものを言う人に、お目にかかった覚えがない。

 ちなみに、博物館法を含む「社会教育法等の一部を改正する法律案」は、5月27日衆議院本会議にて付帯決議付きで可決、6月4日、参議院本会議でも付帯決議付きで可決されたとのこと。→http://www.shugiin.go.jp/index.nsf/html/index_gian.htm http://www.shugiin.go.jp/itdb_kaigiroku.nsf/html/kaigiroku/000116920080527033.htm#p_honbun

 なお、明日、ラウンドテーブル「博物館のアウトプットと予算査定」を行います。ふるって、ご参加下さい。http://d.hatena.ne.jp/takibata/20080423