パブコメ(学芸員養成について)【私立大学学芸員養成課程の苦悩】

 朝から「学芸員養成の充実方策について『これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議』第2次報告書(報告)(案)」と「博物館実習ガイドライン(案)」をダウンロードして読んだ。パブコメをどう書くか、正直なところ非常に難しい。

1.「博物館実習ガイドライン(案)」について
「実習ガイドライン」は、ほぼ常識的な内容。強いて言えば、「1.学内実習」のマル3「実習施設」の項で、「学内実習のための施設(博物館実習室等)・設備・備品を自ら責任を持って確保することが必要である」(p.4)と、「(2)実務実習」で受講人数を「1クラスにつき15名以下で実施することが望ましい」(p.6)は、私立大学の経営を考えると、厳しい条件だ。学内の予算要求の時に、p.4.を貼り付けて出すか・・・。受講人数は、後述の理由で、幸か不幸か、実現できてしまっている。
自分のところで実現できていないのは、学内実習の「(2)実務実習」のマル3「実習内容」中、「教育普及活動・交流事業の企画立案(広報も含む)等」「博物館における学芸庶務」の項。「展示製作実施等に関わる予算案の作成等」←予算はいくらあるの? 予算はつくの? と、思わず突っ込んだりして・・・。「予算の分捕り方」の方が、リアリティがある。あるいは、競争的資金の獲得方法とか・・・。
あと、少し引っかかるのは、p.10.の「学芸員には、生涯学習社会における社会教育指導者として、人々の多様な学習ニーズを把握し、学習活動を効果的に支援するとともに、その成果を活用して行うボランティア活動等の機会を提供することが重要であることを指導すること」の部分。生涯学習→ボランティアという発想は短絡的だと思う。ただし、現在の博物館の置かれている状況を考えると、「社会教育の成果の活用」ではなくて、「大事な博物館をみんなで守ろうよ!それは大事だよ」、という話だろう。そう読み替えれば、まあ、いいか。ということで、「実習ガイドライン」のパブコメは出さないことに決定。
 この部分は、次のように出すべきか。

学芸員には、生涯学習社会における社会教育指導者として、人々の多様な学習ニーズを把握し、学習活動を効果的に支援するとともに、その成果を活用して行うボランティア活動等の機会を提供することが重要であることを指導すること」(p.10)の部分で、生涯学習・社会教育をボランティアに結びつけるのは短絡的である。一方、現在の厳しい財政状況の中、博物館は多くの人々の善意で支えられている。そこで、この部分は、「学芸員は、生涯学習社会における社会教育指導者として、人々の多様な学習ニーズを把握し、学習活動を効果的に支援する必要があること、また、博物館はボランティアをはじめとする多くの人々に支えられているという認識を持つよう指導すること」とすべきではないか。

2.「学芸員養成の充実方策について(案)」について

 「4.『博物館に関する科目』の改善方策」(pp.5〜6)について
 理想論としては、「博物館に関する科目」の充実は望ましい。ただし、現状から考えると、今回の改訂案は、私立大学にとっては相当ハードルの高いものになっている。また、新設科目の学問的基盤がどの程度存在するのか、疑問な科目がある。「博物館に関する科目」の学問的基盤の充実を強く求めたい。


 1.博物館実習の受け入れ先から、資格の乱発を批判する意見が強いため、実習へ進める学生数を相当絞り込んでいる現状がある。このため、1〜2年次の概論等の受講者数が年々減少しており、私学経営上、学芸員養成課程へのこれ以上の投資は難しい状況がある。特に、これまで、教員養成や社会教育主事養成と共通で開講してきた科目(視聴覚教育メディア論、教育学概論)に代わる科目を、学芸員課程単独で開講するのは、大学にとって負担感が強い。さらに、施行規則改訂後も、旧課程で入学した学生が卒業するまでは、新課程と並行して旧課程科目も開講する必要が生じると考えられる。こうした事情の下、受験生減の影響で、大学全体として、開講科目数の絞込みが検討されがちな中で、学芸員養成を諦めなければならない大学も出てくると思われる。学生へ、学ぶ機会を保障する意味で、「博物館教育論」と「博物館情報・メディア論」は、現行科目の読み替えも可能等の配慮が当面、必要ではないだろうか。


 2.大学で開講する科目には、背景として当該科目が学問として成立している必要があると考えるが、例えば「博物館教育論」は、学問として成立しているのか疑問である。現状では、授業の内容が「実践報告」や「実践紹介」で終わってしまわないか危惧する。「博物館関係科目」が学問として成熟するよう、現場博物館学芸員諸氏を始め、多くの関係者には、博物館が扱う個別専門分野だけでなく、「博物館関連科目」の学問的基礎となる(単なる実践報告や宣伝ではない)研究を積極的に公表していただきたい。

 随分悩んだが、パブコメとして出すなら、上記の囲みの中だろうか。この1年ほど、失業するのではないかと本気で悩んだ。2に書いたことは、パブコメか?と自分で突っ込んだりもするが、要は、もっと、「博物館という現象」を研究の対象にしようよ!という煽りのつもり。