『この世でいちばん大事な「カネ」の話』

 新聞の書評欄で見て、ふと気になって、読んでみた。面白くて、電車やバスの中であっという間に読んでしまった。西原理恵子著、理論社ヤングアダルト新書(2008年)、よりみちパンセシリーズの1冊。タイトルだけ見ると、お下品というか、さもしく思われてしまうかもしれないが、内容は、重い。下品、と思われた方は、次の一文をどう思われるだろうか?

 世の中の多くの人は、カネのハナシをしない。
 特に大人は子どもに「お金の話をするのははしたない、下品なことだ」と言って聞かせたりするよね。(中略)でも、子どもが小さいときからそういった「教え」を刷り込むことで、得をする誰かがいるんだろうか?
 いる、とわたしは思う。
 従業員が従順で、欲の張らない人たちばっかりだと、会社の経営者は喜ぶよね。

 西原さんの、予備校・美大時代の経験がすごい。生きるために、彼女は、予備校生時代から、出版社に売り込みをかけたのだという。彼女の語ることの多くは、分かる分かる、それ、という・・・
 
 昨夏、ある高校に出張授業に呼ばれた際、話し終わった最後に、一人の女の子が質問した。
「先生、この世で一番大事なものは、何だと思いますか?」私は少し迷ったけど、「お金だと思う」と答えた。迷ったのは、「自由か? お金か?」の二択だった。でも、お金がなければ、自由は手に入らない。自由のために働く、というのが、私なりの答え。自由だけでは、食べていけないしね。

 最後に、西原さんは、「人が人であることをやめないために、人は働くんだよ」と書いている。それは本当にそうだと思う。
 
 いろんなことが書いてあって、未解決の(たぶん、答えのない)問題もあると思うけど、随分多くのことを考えさせられた。一つは、「カネとストレス」の関係。「お給料も結構もらえるんだけど、でもそれはガマン料も入っている仕事がある」という話と、依存症の話。
 「もっと刺激を」「もっと昂揚感を」・・・仕事依存症と海外旅行依存症?
 アルコールやギャンブルよりは、ずっとマシだと思うけど、まあ、何かに熱中しないと、なかなか生きている意味や実感を感じないのかもしれない。