カールスルーエ植物園(9月5日)

takibata2007-10-04

 9月4日、夕方、ホテルに荷物を降ろしてから、マルクト広場方向へ歩いていく。街のつくりがスイスとは違う。カールスルーエ城から放射線状に延びる道路と、整然とした町並みは、何か権力の意志のようなものを感じさせる。気温も低く、ドイツへ来たことを実感させられる。屋外のテラス席で飲食する人も稀で、少しためらったあと、ファミレス風のステーキ店に入る。食事はおいしかったが、17ユーロの会計で20ユーロ払うと、おつりをくれない。チップ不要のスイスに比べると、え?と思う。3ユーロはチップで渡すつもりだったのに、最初からおつりをよこさないとは。しかも、ウェイトレスは、ドイツ語しか話さなかったはずなのに、お札をしまうなり、Have a nice trip!とか言うのである。

9月5日、駅のコインロッカーに荷物を預けてから、トラムでマルクト広場へ。広場では花市の荷降しが次々と進んでいて、美しい。

 美術館開館まで時間を潰すべく、植物園(Botanischer Garten KARLSRUHE)に行くが、これがなかなか素晴らしい。カールスルーエ城の敷地内にあり、いくつかの入り口から無料で入れる。マルクト広場側から入ると、花壇のある手入れの行き届いたこじんまりした庭園があり、レストランと温室が見える。早朝でむろん、レストランは開いていない。温室を外から覗くと、ちょっと期待できそう。花の写真を撮って過ごす。それから、温室とレストランのつなぎ目のところへ行ってみると、公園職員ふうの若者が何人か食べたり飲んだりしている。温室に入れるか聞くと、時計を指差し、まだだ、と言い、西側を指差し、入り口はあちらと言っている様子。彼らの休憩スペースだった模様。

 その先は、大木が植わる、広い芝生の公園になっていて、イギリスのキューガーデン風。西側に廻ってみる。温室の入り口があり、まだ開館前かと思ったが、ドアを引いてみると、開く。受付は無人。そっと、温室へのドアを更に開くと、女性職員が水遣りをしているところ。その場でチケットを売ってもらう。2.20ユーロ。

 温室内は、西側が、サボテンと多肉植物で、大当たり。といってもささやかで、やっぱり日本の植物園(伊豆シャボテン公園)ってすごいよねと思う。フランスのジャルダン・デ・プラントも、キューガーデンも、この分野は全然ダメで、それに比べるとこのカールスルーエ植物園は健闘していると思う。その次のティランジアのコーナーでも、やっぱり熱川バナナ・ワニ園ってすごいよねと思う。【これはあくまで個人的な趣味の話です。】

 とか何とか思いつつ、何の期待もなしに訪れた場所できちんと手入れされた温室に出会うのは、この上もなく嬉しい。ツユクサの仲間、ハエマンサス、森林性サボテンなど眺めながら、幸福感に浸る。

 入館者は、私のあとに、母親を案内してきたらしい男性の一組。先ほどの女性は、サボテンの頭の上からジャブジャブとシャワーホースで水をかけている。もう一人の男性は高いところに上って剪定。のどかな時間。このあと、温室に隣接する州立美術館の別館オランジェリーのドアをノックして鍵を開けてもらった。
 写真は、カールスルーエ植物園温室の外観(2007年9月5日撮影)

『フランス7つの謎』

 小田中直樹『フランス7つの謎』(文春新書、2005)を読んだ。第二刷が出たそうだが、先に初版本を買ってしまっていたので残念。「なぜマクドナルドを『解体』すると拍手喝采されるのか」を始めとする7つの謎を挙げ、フランスの歴史を紐解くことによって、その謎に答えようとするもの。各章末には、もっと深く知りたい人のための丁寧な文献リストがついていて、その点が、小田中さんの本の一番の特徴かつ魅力かと思う。

 個人的にへえ〜と思ったのは、サン=シモン主義のところ。

彼らの基本的な認識は、万人は働かなければならないというものでした。ただし、労働をちゃんと組織し、適切に生産がおこなわれるようにするには、指導するものが必要です。指導者のもとに社会は一つの工場になり、各人は指導者が良いと考える部署に配属されなければなりません。こうしてできあがった組織を、彼らは「アソシアシオン」と呼びます。(110−111頁)

よく、社会教育やエコミュージアム関連で、フランスの「アソシアシオン」が話題に上り、それがどういうものか、これまでちっとも理解出来なかったのだが、・・・やっぱり分からない。でも、「指導者」を「政府」と読み替えることで、一定の支持者を集めたとか、ナポレオン3世がサンシモン主義を受容して、オスマンに命じてパリの都市改造をしたという解説は、興味深い。

 他国の歴史を知ることで、日本社会の「常識」を再考してみよう、というのが、著者のスタンスだと思うが、「なぜ大学生がストライキをするのか」の章などは、はぐらかされた感じがした。フランスの大学生がストをする理由は「なんとなくわかる気がします」が、日本とフランスの学歴社会が類似してきたとするなら、「日本の大学生がストライキをしないのはなぜか」〜あとは自分で考えてみよう〜になってしまっている。これは別の章の謎「なぜいつでもどこでもストに出会うのか」とリンクさせて考える必要があるのだろう。
 楽しく読める本だけど、さらに謎が深まったように感じてしまった。