『フランス7つの謎』

 小田中直樹『フランス7つの謎』(文春新書、2005)を読んだ。第二刷が出たそうだが、先に初版本を買ってしまっていたので残念。「なぜマクドナルドを『解体』すると拍手喝采されるのか」を始めとする7つの謎を挙げ、フランスの歴史を紐解くことによって、その謎に答えようとするもの。各章末には、もっと深く知りたい人のための丁寧な文献リストがついていて、その点が、小田中さんの本の一番の特徴かつ魅力かと思う。

 個人的にへえ〜と思ったのは、サン=シモン主義のところ。

彼らの基本的な認識は、万人は働かなければならないというものでした。ただし、労働をちゃんと組織し、適切に生産がおこなわれるようにするには、指導するものが必要です。指導者のもとに社会は一つの工場になり、各人は指導者が良いと考える部署に配属されなければなりません。こうしてできあがった組織を、彼らは「アソシアシオン」と呼びます。(110−111頁)

よく、社会教育やエコミュージアム関連で、フランスの「アソシアシオン」が話題に上り、それがどういうものか、これまでちっとも理解出来なかったのだが、・・・やっぱり分からない。でも、「指導者」を「政府」と読み替えることで、一定の支持者を集めたとか、ナポレオン3世がサンシモン主義を受容して、オスマンに命じてパリの都市改造をしたという解説は、興味深い。

 他国の歴史を知ることで、日本社会の「常識」を再考してみよう、というのが、著者のスタンスだと思うが、「なぜ大学生がストライキをするのか」の章などは、はぐらかされた感じがした。フランスの大学生がストをする理由は「なんとなくわかる気がします」が、日本とフランスの学歴社会が類似してきたとするなら、「日本の大学生がストライキをしないのはなぜか」〜あとは自分で考えてみよう〜になってしまっている。これは別の章の謎「なぜいつでもどこでもストに出会うのか」とリンクさせて考える必要があるのだろう。
 楽しく読める本だけど、さらに謎が深まったように感じてしまった。