Staatliche Kunsthalle Karlsruhe/Orangerie(カールスルーエ州立美術館)(9月5日)

takibata2007-10-05

 続いてカールスルーエ州立美術館へ。植物園の温室に接したオランジェリーのドアが、開館時間の10時になっても閉まっているので、ガチャガチャやっていると、受付の女性が、ごめんなさいと鍵を開けてくれた。公園側のドアを開け忘れていたようだ。オランジェリが、近・現代美術の展示室になっている。入館料は本館と合わせて4ユーロ。

 2〜3点のカンディンスキーの絵から始まって、奥に進むほど、現代の作品になっている様子。窓側の一角に、細いロープが張られ、中年の女性が何か作業をしている。・・・公開制作か・・・見ると、白い四角の台の上に、この女性が、紙パックの牛乳を少しずつ注いでいる。表面張力を利用した作品のようだ。同じ囲みの中には、白い(私にはこのときは、発泡スチロールに見えたが大理石らしい)長四角の家のまわりに、タイ米が積まれている。う〜ん、こんな作品(というか光景)は初めて見た!ということで、俄然気になる。彼女に声を掛けようかと迷うが、何と聞いたものか・・・結局、声を掛けそびれて、うろうろするうち、彼女の不在の際に、壁面の小さなキャプションをメモしてきた。Wolfgang Laibの“Milchstein 01−04”.

昨日、検索をかけてみて、謎はあっけなく解けた。ヴォルフガング・ライプ、「現代のドイツを代表する彫刻家」らしい。東京国立近代美術館で、2003年に回顧展が開催されていた。例の作品に似たのも、「ミルクストーン」と紹介されている。

 なあんだ、という感じだが、美術館の方も大変だ。牛乳は腐る・・・毎朝、こうやって、牛乳の交換をしているのだろうか・・・何か、罪作りな作品のような気もするが・・・ヴォルフガング・ライプは男性のようなので、彼女は、牛乳の交換をしていただけなのか。アイデア勝負という意味では、やはり一番、インパクトがあった。

 一旦、道に出て、本館のほうに入る。入り口のすぐ右手にガラスのドアがあり、子ども向けの教育普及の部屋。入ってもいいと言われたので、まずここに入る。“Wald erleben”という企画が行われていて、美術館のコレクションの中から、森や森の生き物が描かれているものを探して、(実際に何点か、絵画が掛けてあったように記憶している)作品作りに結びつけようという趣旨のようだ。奥には、作品制作のコーナー。全体が子ども向けなのが、物足りないと言えば、物足りない。

 ここを出て、展示室に行く。かなりの面積があり、いくつもの部屋に分かれている。スイス同様、キリスト磔刑の図をはじめ(グサッと刺されて、血がボタボタというのも同じ)宗教画がどーんと並び、孫を連れたおじいさんが、熱心にこういう絵を説明していたりする。人物画、静物画、風景画と続いて(すごい美術オンチな書き方だが)、別棟風のところに入ると、印象派に移っていくという展開(たぶん)。この別棟のドアを開けると、小学生が十数人いて、エデュケーターがお話をしている。ちょうど、少し離れたところに椅子があったので、そこに座って、様子を見ることにした。

 子どもたちは、背を向けているので、私の姿は見えないはず。子どもたちは、クッションに座り、お話をしているエデュケーターと引率の先生らしい人は、椅子に座っている。エデュケーターは質問をしながら、1枚の絵を見ながらずっとお話をしている。子どもたちは、けっこう熱心に、手を上げながら質問に答えている。この気の長さは、パリのブールデル美術館で見た教育普及の様子とよく似ていると思った。さっぱり分からぬ、いつ終わるとも知れない会話のやり取りを聞いているうちに、つい、気持ちよくなって、こっくりこっくり、居眠りをしてしまった。

 あとで、地下通路に、この、子どもたち用のクッションが置いてあるのを発見した。ショップで、“Museums padagogik”と書かれた分厚いファイルを買って帰る。このファイルの中には、収蔵作品の白黒写真と、その作品にヒントを得て子どもたちが描いた絵や、活動の様子の写真が載っている。作中の人物になって冠をかぶり、ドレスを着て、花の入った籠を持って、の類だが、白黒の洗練されたレイアウトで、この手の本としては、よく出来ている。というかこれほど本格的な、美術館教育の素材集(活動事例集?)は見たことがないが、全部ドイツ語なので、理念的なことは読んでみないと分からない。お話と子どもたちとのやりとりを見る限り、落ち着いていて、よい雰囲気だった。
 写真は、カールスルーエ州立美術館のオランジェリー(2007年9月5日撮影)