ナショナルギャラリー

takibata2006-08-03

 午後から学生たちの一部と一緒にトラファルガー広場へ。現地解散して、ナショナルギャラリーに入る。ナショナルギャラリーではいくつかの発見をした。まず部屋の数が多くて複雑なので、まわった場所をマップにチェックしていく必要があること。3階の常設展示だけで部屋番号が66番まで振られている。初めは行き当たりばったりでまわっていたが、途中でこれはだめだと思い、本気で1室ずつ部屋番号をチェックしだした。もちろん、1番から順にまわるわけではない。
 最初に印象に残ったのが、Joachim Beuckelaer のThe Four Elements という4枚の作品。一部屋にこの4枚1組の作品が、向き合うように展示されている。Earth,Air,Water,Fireの4つで、それぞれに市場の様子や調理の様子が描かれている。要は、まなまなしい鳥たち(なぜかウサギも)が市場で売られる様子を描いたのがAirである。Waterは魚といった具合である。絵ハガキがあるそうで、ぜひ入手したい。
 興味深いのが、ギャラリートーク。たまたま43室のIngresの作品の前でギャラリートークが始まった。聴衆のうちの10人くらいは、床に座り込む。便乗して私も座り込むが、最後には100人くらいの人が立ち止まって聴いていたのではないだろうか。10分ほどの作品解説のあと、“ナショナルギャラリーへようこそ!”といった締めで拍手。解説をしていた女性が、ナショナルギャラリーの職員かは、定かではない(Daily Eventsのプログラムには未掲載)。
 その後、53室でもギャラリートークに遭遇。こちらは立ったままの、男性による作品解説。十数人程度が耳を傾け、終了後、次々に個人的に質問をしていたのが印象的だった。こちらは、Daily Eventsのプログラムに記載されているので、館の正規のプログラムだろう。題して、“Ten Minute Talk”。このシステムは、ぜひ日本でも取り入れてほしいものだ。集中してお話を聞ける時間というのは、よほどの天才的エデュケーターのお話でない限り10分というところだろう。
 ところで、ナショナルギャラリーの来館者は、実に熱心に作品を見ている。これはいいな、と思ったのは、スペインかイタリアか、の熟年のカップル。おじさんの方が、中型の所蔵作品カタログを読み上げながら、二人で作品を見ているのである。ちょうど、イタリアの1350-1400年の作品の部屋で、ガラスケースに入った、作者未詳の“The Wilton Diptychi”を二人で覗き込んでいる。先にカタログを買ってしまい、それを片手に展示室を回る、というのは、いいアイデアかもしれない、と思った。言語が違い、母国語のカタログが販売されているなら尚更だ。
 さて、作品を見て回るうち、これはすごい、と思ったのが、ルーベンスの“The Rape of the Sabine Women”という穏やかならぬ題名の作品。何がすごいかというと、真珠のネックレスや髪飾りの描写が見事なのである。私は絵画の細部にこだわる性格なので、こうした部分の描き方に目がいく。他のルーベンスの作品でも、女性の帽子の羽根や、指輪、襟やひげの描写が素晴らしい。神は細部に宿り給ふ、とはこのことか。
 あと、もう一つ、目を引かれたのはレンブラント。服装の、白の色使いがよい。レンブラントの大型作品は、近くで見るより2〜3メートル離れてみるのが、肉付きなどが分かってよい。ルーベンスのような、細部へのこだわりはない。
 ナショナルギャラーに到着したのがおそらく2時半ごろ、6時閉館で、10分前にはショップも閉まり、ひたすらガードマンに追い返される、という感じである。昨日の大英博物館同様、図録類を買うためには、もう一度訪問する必要がある。それにしても、このナショナルギャラリーが入館無料とは。