レッチワース:こんにちは、ハワードさん

takibata2006-08-14

 今日は思い切って、レッチワース行きを決行。朝から寒く薄暗く、お昼に寮を出た時には小雨も降り、このままでは冬のレッチワースを訪問した渋沢秀雄の二の舞になるのでは、と危ぶまれたが、行ける日に行っておかないと今後何があるか分からないので、決行。
 初めて一人でNational Railに乗る。英国の鉄道はよく分からないのだが、同行のT先生のお話では、分割民営化されたそうで、今日私が乗る路線は、First Capital Connectという会社が運行している。(実は、先日の2回目のキューガーデンズからの帰路、地下鉄に乗ったつもりが、Silverlink Train Service という郊外列車(日本のガイドブックには路線すら載っていなくてあせった)に乗ってしまっていた。地下鉄も地上を走るし、駅のホームも共通なので、間違いに気づかなかった。
 今日のレッチワースへの列車は、キングスクロス駅からで、時刻表があればいたって簡単。キングスクロス発13:51、レッチワース・ガーデンシティ駅着14:25分。
 出国直前に見つけたHPの英国旅行記録(今のところ著者不明)をたよりに、ただし、プリントアウトの際、右側半分が切れていて肝心の記述が読めず、とりあえず、役場に行けば、地図やガイドブックがもらえるかもしれないと期待して行く。http://www.geocities.jp/toshishi_oza/england/england.htm(のレッチワースのページ参照)
 噴水のある大きな公園(ブロードウェイ・ガーデンズ)があり、これがハワードの計画にあった噴水公園なのか、と思う。簡素だが、広く美しく、青年たちがサッカーに興じている。公園の周りに図書館やミュージアムがあって、というハワードの計画通り、小さな公共図書館と、レッチワース・ミュージアム&アートギャラリーがある。その小さな、ミュージアム&ギャラリーに入る。ここも無料。1階が自然史の展示、2階がアートギャラリーと、教育普及活動の小部屋と、そして考古学を中心とする歴史展示。階段を上がったところに、寄付の箱がある。
 アートギャラリーは、日本語のアートギャラリーから想像するものとは全く違い、子ども向けの、絵葉書をめぐる展示だ。バカンスを主題としていて、絵葉書に描かれていた時代の古風な水着の展示や、片隅には、砂場が! そのビーチに見立てた小さな砂場で、遊んでいる子がいる。親子連れや、認知症かと思われる足元のおぼつかないおじいさんや、子どもだけのグループなどが、小さな展示室の中でめいめい楽しんでいる。こういう素朴な展示は、日本人的には驚くものだが、無料の強みか。何か、日本人は、刺激の強いものに慣れすぎているのか。その隣の部屋は考古学中心の展示。
 こんな小さな博物館にも、受付の女性がいて、絵葉書やおもちゃなどを販売している。旅行者は私くらいで、あとは地元の若者や子どもづれである。普及活動のパンフもあり、普及活動の紹介パネルも張られている。いたって素朴なハンズオン的なしかけがあちこちにある。
 役所に行って、地図等を所望すると、インフォメーションセンターへ行きなさい、と教えられる。新しく出来たようだ。そこで、マップ、ビジターガイドの小冊子、First Garden City Heritage Museumのパンフなどを貰う。
 First Garden City Heritage Museumは、ノートンウェイ・サウス沿いにあり、こちらは有料(£1)。住民、学生は50ペンス、16歳以下は無料とある。建物の中に入って、階段を下りると、びっくり。そこには、机に向かうエベネザー・ハワードの姿が。一瞬、本物のおじいさが座っているのかと思った。
 こんにちは、ハワードさん! 『明日―真の改革に向かう平和な道』や『明日の田園都市』のおそらく初版本も展示されており、特に前者はハワード本人から両親に贈られたもの、と書かれている。映像もあり、ハワードの葬儀の様子が延々と続く。
 奥の部屋は、かつてのパーカーとアンウィンの設計事務所。この博物館の建物は、1907年にパーカーによってデザインされたもので、遺族によって博物館用に寄贈されたものと書かれていたと思う。
 受付に販売用の書籍もあり、迷うが、ガラス棚の中なのと、閉館の5時になってしまっていて、買いそびれる。中身が確かめられないので決断できなかった、一瞬の出来事である。
 レッチワースのまちをうろうろと歩きまわる。大通りの並木道、ゆったりした町並み、何枚写真を撮っても飽きないような、しゃれた住まい。やがて、通りによって、道幅、住宅の様子の微妙な階層差に気づく。バーズヒルから鉄道の高架をくぐり、駅の北側へ出る。マツダ、ホンダの販売店が並んでいて驚くが、その角を曲がると、また広い並木道とゆったりした住宅が並ぶ。線路沿いに、Retchworth Settlementがある。1908年にthe Skittle Innの中のビールのない禁酒パブとしてオープンし、1923年からは、成人教育と地域活動のセンターになったとパンフに書かれている。掲示板に2006−2007年用のプログラムが出来た旨書かれているが、人の気配もなく、中の様子からして、今はあまり使われていないのではないだろうか。いずれにせよ、英国に来て、初めて成人教育センターを見た。まさに日本の小さな公民館のような感じである。
 もう一筋北側のIcknield Wayの北には、Norton Commonがある。共有地なのだろうか。これといって手の加えられていない林が広がっており、中にちょっとした小道が作られている。夕方からは天候もよくなり、歩いていて気持ちがいい。観光客も日本人もいない、車の交通量が多いのを除けば、実に静かな、並木にリスが上り、鳥の声の聞こえる、まさにガーデン・シティである。
写真は、First Garden City Heritage Museumのハワード。