『地域と歩む資料保存活動』

 最近のマイブームは、「現地保存」×「参加型調査」=(古)文書。越佐歴史資料調査会編『地域と歩む資料保存活動』(岩田書店、2003)を読み終わった。新潟県内の文書館や博物館勤務の有志8人が手弁当世話人となり、地域の人たちと古文書調査を行う。やがて、世話人たちの手が回らない地域の調査を古文書愛好会の人たちが引き継いでいく。
 感傷にすぎず、斜にも構えない、静かな語り口。屏風の下張り文書を剥がす時、万全の準備をして「聞く研修」「見る研修」までしたのに、興奮に包まれる会場。「誰もが剥がす作業をしてみたかったのである」の一言に込められた世話役たちの思い。
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 この屏風の下張り文書の解体整理によって、地域における史料保存意識を高揚させることが最大の目的だったとするならば、その目的は充分に達成されたと言えるだろう。しかし、史料管理の立場からすれば、今回の整理は成功したとは言い難い(p.100)。
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 調査中に悲しい別れとなってしまった内藤さんの手記。「先生方は出てくる古文書そのものもさることながら、古文書群の調査の仕方、整理の仕方、保存の在り方を追究されており、なるほどそんな研究もあるのかと驚いた。そして世話人メンバーのほかに、広く県外から参加される若手研究者の多いことにも感心した」。この本のよいところは、調査に関わった、史料所蔵者はじめ地元の人たちが、実名で登場するところだ。AさんやBさんではない、世話人と対等な個人として、一人ひとりのお名前があがる。安塚町議会だよりの高野議員と町長さんのやりとりなども興味深い。
 この本の編著者には、9月4日の「おすすめ論文」に書いた山本幸俊さんのお名前もあった。出版社サイトに収録された書評はこちら。http://www.iwata-shoin.co.jp/ 新井浩文さんの書評が詳しい。