昨日の夕刊/『三位一体改革と自治体財政』

takibata2006-11-17

 昨日・今日と入試で、今年は日博協の大会に行けなかった。入試業務が済むと家に飛んで帰って(まだ)論文を書こうとしている。
 昨日の挫折。日経の夕刊にタイムリーな記事が出た。「戦後政治あの日あの時 1987年11月27日 竹下首相が「ふるさと創生論」 ばらまきのツケ 今なお地方圧迫」
 この記事の中で、地総債が出てくる。

 自治体が手掛けるハコモノ建設の総事業費のうち約75%がこの地方債でまかなわれ、さらに元利返済の最大55%が地方交付税によって補てんされる仕組みだ。2002年度に廃止されたが、04年度末の未償還残高は8兆8千7百億円に達し、いまだに地方を苦しめている。

 昨晩はこの記事を読んでいろいろ悩んでしまった。まず、75%という数字と、未償還残高の出典はどこにあるのだろうか? いろんな文献をひっくり返して調べるが、見つからない。未償還残高には、交付税措置される分を含んでいるのだろうか(という問いの立て方が正しいのかどうかも自信がない)。
 「元利返済の最大55%が地方交付税によって補てんされる」という書き方だと、自治体の首長さんの議会答弁と同じだ。地総債は、元利償還金の30〜55%程度が交付税措置されるが、「交付税措置」とは、普通交付税の算定上、基準財政需要額に算入されるにすぎないはずだ。
 一番気になったのは、未償還残高は8兆8千7百億円という数字。白川先生の『自治体破産』によると、全国の地方自治体の公債残高は204兆円(2004年度末見込み)となっている。総額から見れば8兆円など微々たる数字ではないか?
 半月ほど前、気鋭の建築計画の先生とお話をしていて、美術館建築の批判をするぐらいなら道路とかもっと他に批判するものがあるだろうと叱られた。そのこともあって、地総債による借金は、8/204なのか気になって仕方ない。あれこれ本をめくっているうちに眠くなり、どうしてこういう基本的なことがすぐに見つけられないのだろう?とふて寝してしまった。
 悩んでいても始まらない。今日は、NIKKEI NETに問い合わせメールの書式を発見したので、出典を教えてと送ってみた。お返事もらえるだろうか?
 で、今日は、岡本全勝ほか『三位一体改革自治体財政』(公人の友社、2006)を読んだ。いろいろ面白かったが、パネルディスカッションのところで、逢坂さんのこんな発言があった。

 迷惑した事例というのは山のようにあります。例えば、これはもう15年くらい前の話ですが、総務省から『単独事業費の伸び率が、例えば10%未満だったら理由書を出せ』と言われたことがあります。単独事業を伸ばせば必ず借金がついてまわるのになぜそんなことを言われなければいけないのでしょうか。次も10年以上前の話ですが、全体予算の70%ぐらいでその公共事業の目標を達成することができた。これは民間の企業なら評価されるべきことなんだけれども、『大蔵省に怒られるから、そのお金を使え。もし残すなら町が悪かったと理由書を書け』と。

 地方自治体だけを悪者にするわけにはいかないだろう。岡本氏は総務省の課長さんだが、「地方自治体がいやがる仕事、無駄な仕事を国が押しつけたことは、お詫びしなければなりませんね」と。本書は、北海道町村会が企画した地方自治土曜講座(2005年7月)の記録ブックレットで、前半の講義部分もたいへん刺激的だ。

 写真はTAKASAGOビル(2005年3月撮影)