『空間管理社会』

takibata2006-12-05

 日曜日、何もやる気がしなくて一日寝て過ごした。夕方になって熱が出ていることに気づいて、そのせいだったのかと変な意味で安心した。困ったのは月曜日の授業。朝一だと、休講の連絡のしようもなく、200人あまりの学生の怨恨と時間的ロスを考えると、恐ろしくて休めない。ペナルティのように補講がついてくるし。
 そんなわけで、月曜も出勤。ただ、風邪はこの日を境にようやく回復の兆し。気分も少し明るくなってきた。
 熱をはさんで読んだ本が、安部潔・成実弘至編『空間管理社会 監視と自由のパラドックス』(新曜社、2006)。「都市の自由とまなざし」「住まいのポリティクス」「メディアの自由と不自由」の3パートからなる。各パートには詳細なキーワード解説と参考文献リストがついていて、実はこの部分が一番面白かった。読み手の興味に応じてどんな文献を読んだらいいか、幅広く近年の研究を紹介してくれている。
 本文は、概論的な記述という印象を受ける。個別具体例を掘り下げたものではないので、インパクトに欠けるのだろう。安部さんが、「寺院での夏祭り」をポリフォニーな空間/自由に人が行きかう「街路」と位置づける、あるいは、前田至剛さんが、生き辛さを抱える彼女・彼らのネットを媒介にしたコミュニケーションに「空間の自由」の可能性を見ようとするのは、思わず、そういう例しか日本では出てこないのか、と思ってしまう。
 私がこの本を読んだ動機は、かなり現実的で、横須賀市の防犯灯(防犯カメラではない!)設置の問題を考えていたからである。(しかし、この本を読んでもすぐに名案が浮かぶわけではなかった。)「『民意』が市政に生かされることを願う会」の野村さんのブログを見ていたら、この防犯灯設置のための予算がついたようだ。http://blogs.yahoo.co.jp/nomurat8222/7531721.html
横須賀市民の中には、美術館(建設)にお金を回す余裕があるのだったら、防犯灯をつけてほしいという願いがある。米兵による暴力事件があった同じ場所で、また同様の被害が起こったとのこと。ちなみに、2005年度普通会計決算での横須賀市の財政の硬直化は、過去最悪のようだ。http://www.kanaloco.jp/editorial/entry/editoriala44/横須賀市の財政、神奈川新聞2006年10月29日) この記事でも、PFI事業である長井海の手公園「ソレイユの丘」と、横須賀美術館への言及がある。

写真は横須賀美術館(2006年8月25日撮影)