[読書]『沖縄の市場<マチグヮー>文化誌』

takibata2007-09-29

 小松かおりさんの『沖縄の市場<マチグヮー>文化誌』(ボーダーインク、2007)を読み終わった。血が熱くなる本である。

 小松さんはもともと生態人類学の専攻で、伊谷純一郎さんに勧められて市場研究を始めたそうだ。修士時代に、牧志公設市場に行き、数日店を観察した結果、丸昌ミートに狙いを定め、店においてもらえないかお願いしたというのである。押しかけ助手40日を皮切りに、売り買いの技法を調査して修論にまとめる。その後、牧志公設市場で扱われる商品の変化に気づき、幻の島豚アグー、モズクと海ブドウ、島バナナの商品化や養殖、栽培技術の開発・改良過程を追うという、個人的に非常に興味の引かれる内容が展開されている。

 それだけでも十分面白いのだが、個人的には、この本のもとになった論文をぜひ、読んでみたいと思う。というのは、私自身が、牧志公設市場よりディープな農連市場と水上店舗の調査、報告書づくりを手がけたことがあるからだ。地理的にも近接した地域を扱いながら、私のは、ほんのさわりだし、内容的にも、扱われている商品そのものにまで調査対象を広げるやり方に、盲点を突かれた思いで読んだ。それに、こういった調査を「論文」という形式にまとめる方法が、恥ずかしいことだが、いまだによく分からないからである。

 素直にジェラシーを感じ、年齢は小松さんのほうが若いが、弟子入りしたいくらい。自分は、こういう調査・研究がしたかったんだ、と素直に思う。

 この本の中に、島豚アグーの復活に大きな役割を果たした名護博物館の島袋正敏さんのことが出てくる。

 1971年から、名護博物館の創立に向けて資料を集め始めた島袋さんは、博物館を過去の殿堂としてではなく、現在と未来のための存在にしたいと考えた。沖縄の文化として、遺伝資源を守ることが大切だと考え、生きた家畜を展示する「在来家畜センター」を構想した。(88頁)

この部分を入力し始めて、重大なことに気づき、本棚に走った。伊藤寿朗『ひらけ、博物館』の表紙の写真って、もしかして・・・・見る眼を持たなければ、見えていないのと同じである。・・・何十回となく見たこの写真は、名護博物館の写真だった・・・
 ということで、びっくりの一日。