『フランス革命 歴史における劇薬』

 朝、出勤途上で読み始め、ついつい面白くて、結局帰宅後に読み続けてしまった本。遅塚忠躬(ちづか・ただみ)『フランス革命 歴史における劇薬』(岩波ジュニア新書、1997)。この本を読んだのは、小田中さんの『フランス7つの謎』の読書案内の中に、この遅塚さんのジュニア新書を読めば、フランス革命のことはほとんどわかると紹介されていたため。

 確かに、この遅塚さんの『フランス革命』は、革命の推移について、ベクトルを用いた図などを使って分かりやすく説明してあり、文章も平易で、本の構成も読みやすく工夫されている。

 フランス革命が偉大と悲惨の二つの側面を持っていたのはなぜかを、革命二分説(はじめのうちはよかったが、のちに悪くなった)と、ブロック説(二つに分けることはできない、一つのかたまりだ)という二つの説を紹介したあと、著者は革命ブロック説に立ち、さらに進めて、「フランス革命は一つの劇薬だったのだ」と仮説を立て、その仮説を検証するというスタイルで本書は書かれている。フランス革命が「抗がん剤」に喩えられ、抗がん剤にとっては、一つの作用が二つの現れ方(「古い社会の変革」と「恐怖政治」)をもたらしたという仮説である。

 そこで、第2章では革命の原因(社会状況と変革の担い手)、第3章では革命の「効果」(古い社会の変革)、第4章では革命の「痛み」(恐怖政治)、第5章では革命期に生きた人間たちについての考察が書かれている。第5章に、著者が考える劇薬の正体は何か(=革命とは何か)が資料を引用しながら書かれていて、読んでいると思わず涙腺が緩むのだが、だからこそか、ちょっと待てよと思ってしまうのだった。

 本を丸ごと1冊、仮説と検証というスタイルで書いているところが興味深いのだが、「仮説―検証」がこれで成功しているのかは、よく分からない。