中教審(制度問題小委員会)配布資料から

 博物館法改正問題のその後はどうなっているのかということで、遅ればせながら、中教審のHPを開いてみた。今のところ、公開されている最新の情報は、中央教育審議会生涯学習分科会制度問題小委員会(第7回:2007年11月22日開催)配布資料のようだ。
 当然、博物館法だけでなく、社会教育法等の大問題があるのだが、それは、ここでは触れない。
 さて、制度問題小委員会の頁にアップされている資料の中では、「生涯学習・社会教育関係制度に関する提言事項の今後の検討の方向性について(案)」が面白そうだ。個人的関心で読むと、「社会教育法関係」の項目で、

(前略)社会教育施設の所管に関しては、社会教育施設の所管を地方公共団体の長へ改めてもよいとする指摘がある一方、社会教育施設は市民の多様で自主的な教育活動を助長することを目的とするものであり、施設の目標設定に関する政治的中立性の確保等の観点から教育委員会の所管が望ましい、社会教育の所管については学校教育との連携という観点も重要であるとの指摘がなされた。
 これらの指摘を踏まえ、小委員会としては、社会教育については、政治的中立性の確保や学校との連携の必要性に鑑みると、原則として教育委員会が所管することが適当である。また、地方公共団体の長と教育委員会の関係については、教育委員会又は委員の自主性と職務権限の独立性を侵害しない限度において地方公共団体の事務の能率的処理等を促進する補助執行等の制度が既に存在しており、弾力的な事務の執行に関して特段の問題はない。(後略)

という部分を見つけた。だとすると、現在進行中の、博物館登録制度見直しの議論(設置主体の性格に関わらず、一定の基準を満たした館を登録博物館としたい)と矛盾する。この点は、どう解決するのだろうか?
同じ資料の中の、「博物館法関係」の項目の中では、

• 博物館登録制度については、登録博物館がわが国の博物館活動の基盤を形成し、博物館法の中核制度として発展していくためには、新しい制度はどのようにあるべきかについて審議がなされた。現行法では、登録博物館の設置者が教育委員会民法第34条法人及び宗教法人等に限定されているが、既に社会教育関係の国庫補助金一般財源化されたことによって、公立博物館にとって登録のメリットが少なくなっていることもあり、登録博物館が全体の2割程度にとどまっており、制度の形骸化が大きな課題となっている。このような状況の中で、「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」報告においては、登録博物館が我が国の博物館活動の基盤を形成し、博物館法の中核制度として発展していくための新たな登録制度を提言している。
•  小委員会においては、「登録制度により日本の博物館の質の維持、向上が図られるのではないか」、「設置主体が誰かということよりも展示の質の水準等を基準とすべきではないか」、「学習者に対し質の高い博物館に関する情報を提供するという面がある」等、制度改正を肯定する意見がある一方で、「登録制度がわかりにくい」、「登録することで何が変わるのか明確な制度設計をするべき」等課題を指摘する意見がみられた。
•  これらの指摘を踏まえれば、登録制度の見直しに当たっては、利用者の要望を十分に考慮すること、地方公共団体や博物館の設置者等に過大な事務負担を招かないよう配慮することが必要である。その上で、「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」で提言された登録申請主体の限定の見直し、審査基準や審査方法(第三者機関による審査や一定期間毎の登録要件の確認等)の見直し、登録博物館の名称独占の付与等については、現時点では関係者の幅広い合意形成になお時間を要することを十分に踏まえつつ、引き続き検討する必要がある。(後略)

とある。太字は、私が加えたもので、注目した部分。
所管の問題は、根本から考えると、「調査研究や展示・教育の内容等について、首長をはじめとする非専門家が恣意的に口を挟むことをどう防ぐか」をきちんと法の中に書き込めば済む問題なのかもしれない。曽田さんのブログから刺激を受けて考えているうちに、そんなことをふと思った。

私が“新登録制度=第三者機関による審査”に対して、懐疑的なのは、評価機関そのものが、恣意性を免れうるのかが気になるからである。パブコメで、第三者機関が登録審査を担当するのならば、第三者機関を複数作って、選べるようにすべきだと書いたのは、審査される側の博物館の選択の自由を少しでも保障したほうがいいと思ったからである。
複数案が頭に浮かんだのは、大学の認証評価機関が複数あることを念頭に置いたためである。ちなみに、そのお値段は? と、思って調べてみたら、大学基準協会の大学評価手数料は、1大学あたり200万円、1学部あたり50万円とある。(財)日本高等教育評価機構の評価手数料も、基本費用は、1大学200万、1学部50万円と、横並びだ。独立行政法人大学評価・学位授与機構の評価手数料は、(基本費用200万円+30万円×学部数+20万円×研究科数)だそうだ。
博物館登録審査を教育委員会でなく、第三者機関が行うとすれば、手数料はいくらになるのか?とか、手数料以外にも会費を集めるのかな?とか、連想ゲームは進んでいく。審査手数料とか会費は表の支出だとして、自力で申請書を書く時間的、人的余裕がないから、コンサルに相談しようか・・・とかなると、裏の支出もかかってしまう・・・でも、そんな経済的余裕は博物館にはないと思うが・・・
学芸員養成課程が立ち行かなくなったら、新ビジネスを立ち上げたらどうだろうかなどというのは、タヌキの皮算用ならぬブラックジョークにしておきたいものである。