[読書]『アキバをプロデュース』

 往復の車中で読んだ本。今年最後の本がこの本かと思うと複雑な気持ちはするが・・・。
妹尾堅一郎『アキバをプロデュース 再開発プロジェクト5年間の軌跡』(アスキー新書、2007)。タイトルに惹かれて買った。「産学連携で失敗する自治体のパターン」という帯に書かれていることは、まあ、笑って読むしかない。本の全体についてはノーコメントということで、特に面白かったところを2箇所引用。
 まず、「アキバの街は垂直に伸びる?」の部分。

 秋葉原の街はJR秋葉原駅の東側に向かって水平に拡がっています。しかし、秋葉原の中心街区そのものは垂直に伸びているのです。
 つまり、店舗はビルの一階だけではない。ちょいと見上げると、ビルの階上には、マニアックな電子パーツ店からメイドカフェまで、漫画喫茶から怪しげなジャンク屋まで、様々な店が入っているのがわかります。
 しばらく前までは、ビルの上の方のフロアには、電子部品関係の問屋や小さな商社の事務所が入っていることがほとんどでした。あるいは、大手メーカーの研究所が看板も出さずに秘密の拠点を持っていました。研究所が実験器具や部品を調達するのに、アキバに拠点を持っていると極めて便利だからです。
・・・いずれにしても、パーツにせよ、サブカルチャーにせよ、ビルの上にある店の馴染みになったら、ようやく“アキバ通”と言えるのかもしれません。(70−71頁)

 続いて、「タウンウォッチング」編。

 深夜まで秋葉原で仕事をして、上野広小路か湯島を通って、谷中の個人の仕事場に戻るからです。小一時間の運動です。毎日違う道を選んで通る“タウンウォッチング”は社会を読むには最適です。必ず数件のコンビニに立ち寄って雑誌の棚から食品の棚までざっと眺めるだけで、あるいは深夜のマクドナルドに寄るだけで、それはいろんなことがわかるのです。・・・最近の若手プランナーが街の中も雑誌・書籍の中も歩かず、小手先で企画書もどきを書くのにはびっくりします。(195−196頁)

 思わず、妹尾さんは、深夜にマクドでバーガーとか買うんだろうか?とか、コンビに寄るごとに、何か買うんだろうか・・・とか要らぬ心配というか、似たようなことを志す(?)人間として、興味津々に読んだ。

 ところで、思いがけないところで、アキバの名前を聞いた。
 それは、立山黒部アルペンルートのお客さんのことである。今回の調査で教えていただいたことなのだが、立山黒部アルペンルートの外国人観光客で最多は台湾からのお客さんで、そのルートが、関空―京都―加賀屋―立山黒部アルペンルート―東京―秋葉原―ディズニーランド、なのだそうだ。
 宿泊は、シングルかツインの希望が圧倒的なので、長野県側の大町温泉郷(4人一部屋が標準)は素通りされてしまうのだそうだ。一気に東京まで出てしまうか、諏訪で泊まるか、あるいは、白馬村のペンションのほうが人気があるとのこと。
 妹尾さんの本の最後の方に、アキバと、東京ディズニーリゾートを結ぶシャトル船運航のアイデアが載っているが、観光開発的には、グッドアイデアなのだろう。