文科省栗原さんのお話

 気を取り直して、2月29日に聞いた文科省の栗原祐司さんのお話(平成19年度兵庫県博物館協会研究会にて)をここにアップしておく。メモが追いついていないので、不正確な部分もあり、あくまで私が書き残しておこうと思う範囲だけなので、博物館法改正に関する正確なことは、今後、文科省の公式サイト等でご確認いただきたい。おとつい書いたミッションというのは、「自分の耳で聞いてきて下さい」というもの。()内は、私があとから補った部分。【】は補注。ゴシックは私が勝手につけた注目あるいは驚愕のポイント。突っ込みたいのを我慢している・・・

(博物館法改正法案は)閣議決定を済ませて、今日(2月29日)5時に国会に上程される(予定だ)。博物館法改正が必要だと、文科省の中で声高に主張して、(自分が担当者になった)。当初の理想は大きく、しかし(実際には)理想通りにはいかず、社会教育法、図書館法の改正もあり、博物館法だけに専念できず、(今回の改正が)第一歩、ブレイクスルーになって、5〜10年おきに変えていって、リセット(したい)。今回は第一歩だ。
 形式上は中教審答申を受けて、今回改正する内容は、中教審答申に取り込まれている。

 「新しい博物館の姿」【「新しい時代の博物館制度の在り方について」のことか】は、委員が6人で、(当初は委員を増やしていく予定だったが)、結果的には6人【これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議委員】で突っ走ってしまった。十分な関係者の合意が取れていたか、批判も浴びた。

 法律は、変える必要がないものは、特段変える必要がない(と言われて、博物館の)定義は改正しない。報告書【「新しい時代の博物館制度の在り方について」】で問題になったのは、1.登録制度、2.学芸員養成、の2点だった。
 韓国では、(博物館に)補助金を投じるため、(補助金目当てに)私立の博物館では有象無象の博物館もできる(とのこと)。日本の博物館法(制定当時も)脱法行為を防ぐために登録制度を作った。登録博物館には(補助金や、税制優遇措置があったからだ)。当時の国会でも、そのように書いている。現代では補助金制度はなくなった。
 博物館相当施設(の規定)は、昭和30年の改正の際に、昭和26年には附則の形で(書かれていたものを条文化したもので)、学芸員を配置するために、何年間か「博物館」に勤務している人(が学芸員資格を取得できると)と書いているが、登録博物館に限定すると(該当者の)数が少ないため、博物館相当施設での経験もカウントするために、昭和30年の法改正で、(附則から)法律に引き上げたものだ。博物館相当施設は、学芸員配置を促進するための制度だった。公立博物館には、補助金がなくなり、登録・相当の違いがなくなった。
 国立館はほとんど、独立行政法人化しており、国立館も(博物館法に)含めようということで、内閣法制局と交渉したが、国立館には、独法の根拠法があり、博物館法の対象にするのはいかがなものか(と言われた)。博物館法には、入館料無料規定があり、国立博物館に(博物館法を)適用させると、なぜ(有料なんだという)議論が出てくる。財務省は、独立行政法人は独立採算で、と言っているので、(入館料)無料原則に対する抵抗がある。これは野党に口実を与えることになる。(国立館にとっては)登録のメリットなし(ということで、国立館に賛成してもらえなかった)。国立館の館長(の多くは)わが省のOBがなっている・・・
 大学博物館は、国立大学法人の設置法【国立大学法人法のことか?】(がカバーしており、この法律は)必ずしも博物館のために作ったものではない。私立学校法人立の博物館、私立(大学附属博物館)だけを対象にしてもバランスが悪い。国立・私立セットにすべきで、(今回は)間に合わなかった。
 企業立博物館には、公益性が求められる。博物館法の対象にするには、登録基準で(博物館だけを)個別会計(にするなどの方法が求められる)。公益法人改革が2008年12月に実施される。公益法人は2段階に分けられるが、今回、一般社団・財団も登録の対象にしようと【この部分メモ追いつかず】。政令【博物館法施行令第一条】で現在、NHK赤十字が(対象とされているが)、もう少し幅があるのでは。(社会福祉協議会【シャキョウと聞こえたのだが、社会教育関係団体のことか?:この部分不明】や)NPOが登録申請できるように、政令改正によって登録博物館になる道があるのでは。柔軟に対応して、次の改正には着手したい。
 登録基準は、各都道府県で(差があり)、「望ましい基準」【公立博物館の設置及び運営上の望ましい基準】を何らかの形で変えていかないと。より精緻に、協力者会議で検討して、共通基準、特定基準、館種ごとに、動物園・水族館、植物園にとって望ましい基準は何かを動水協植物園協会に(検討してもらっている)。博物館法改正後、来年度には、望ましい基準の改正を行いたい。
 (今回の法改正では評価の)努力義務を(入れたので)、評価に対する基準(が必要だ)。質的な(評価の)基準の作成に向けた検討をしている。望ましい基準を作るときは、パブコメにかける。

 学芸員制度については、(本来)登録博物館でないと学芸員を名乗れない。学芸員は任用資格で、(登録博物館以外では)本当は学芸員と名乗ってはいけない。
 学芸員有資格者は、年間1万人程度養成され、昨年は8,000人だったが、実際に(採用されるのは)年間400人、数パーセント程度だ。このギャップは何なんだ。大量生産されており、ハードル上げたほうがいいのでは(という議論がある)。
 実習生の引き受けで、館が困っている(という話があり)、一定の基準を(という意見がある一方、)学芸員は半分くらいは学部卒で採用されているから、変えなくていいじゃないという議論もある。文科省(としては)質の向上を図らないと(と思っている)。
 昨年8月にウィーンでICOM総会があり、ハイアースタンダードを求めなければ、「より高い基準の制定と専門家の育成」が【この部分メモ追いつかず】。
 学芸員養成は、省令の改正へ(もっていきたい)。協力者会議のワーキンググループで検討してもら(っており、必要単位)12単位を見直す(つもりだ)。また実習ガイドライン(をつくりたい)。1年間のインターンシップは、現実的ではないということで今回は見送られた。現職研修は、任命権者以外に、文科省都道府県教育委員会が行う(という)条文を設けた。研修の充実を図り、今後の検討課題としたい。

 私【栗原さんのこと】は、博物館大学院を作ろうと、大学関係者に働きかけしている。(附属博物館を)大学で持っていれば、自分のところで実習ができるが(義務化することは)大学の自治(に抵触する)。
 上級学芸員は、自治体において(すでに)職階制があり、現場が混乱する(という意見があった)。国家資格か(あるいは業界団体が認定するか?)。上級学芸員は、大学での養成とセット【この部分メモ追いつかず】。韓国では、国立の大学は博物館が必置で、(学芸員資格は)4段階で、経験年数で決められる。
 年度内にあらあらの方向性を(出したい)。日博協には望ましい基準を、動水協と植物園協会、3つまとまって協議【この部分メモ追いつかず】。
 専門家集団が、自律的に運用できる観点、視点を。
 2年後、上海でICOM大会が開催される。日本でなぜ、ICOM大会がないのか。アジア、オセアニア調査を始めている。ICOM国内協会が実態を調査している。世界におけるアジアの博物館。
 ICOMASPACのチェアパーソンは韓国(の人だ)。1976年以降、(ICOMの会合は)日本では一度も開催されていない。アジアの一等国として、何らかの国際貢献を。数年後、ASPACか、ICOMの大会を日本で開催したい。日博協の3つの調査には、グローバルな考え方(を盛り込みたい)。
 パブコメは99通で、7〜8割は関係者からのもので、一般の関心が薄い。次の法改正に向けてどうあるべきなのか? 
 理想はアメリカ型で、第三者機関が自主的自律的に(動ける)体制づくりを。韓国は国家資格だが、運用は(博物館)協会が行っている。(関係)学会が大同団結して、ICOM、ASPACの(招致は)、関係者が団結するいい機会になるのでは。
 
 法案の内容ははなはだ不十分で、悔しい。告示や省令改正に、新しい取組みを。
 新学習指導要領が3月15日までパブコメを受け付けている。【博物館に関係する新旧の説明:本ブログでは省略】
 
 (今回の国会上程に先立ち)文教系の議員に、議員会館を回って根回しをした。社会教育関係三法の改正で、議員の中には、公民館に関心を示す人はいる。図書館に熱い思いを語る先生方もおられたが、博物館について語る人は、ほとんどいない。国会議員が思いを持っていないということは、国民が博物館を大事だと(思っていないことになる)。総理は、公文書館を充実させたい(という思いを持っているが)、法改正も、博物館の予算増も、政治家に声を届けて(ほしい)。

 このあと、実際の条文はどこが変わるのかの説明があった。会場からの質問はゼロ(私自身は、県博協のメンバーではないから、おとなしくしていた)。文科省におかれては、日本各地の博物館の困難な現状を直視して、地に足のついた政策を展開していただきたいものである。なお、パブコメの具体的内容と、丹青研究所に税金を用いて委託した調査の結果(大学への調査を含めて・・・あのアンケート、書くの大変だったのだから)をHP上で公開していただきたい。どちらも、今後の日本の博物館のことを考える共通の財産として使えるはずだから。