大山子798芸術区

takibata2008-03-21

 朝、明晩の京劇の予約の確認に、電話をかける。北京の公衆電話は、有人のスタンドで、電話器が並べてあって、自分で番号を押して普通に電話をかけて、あとからお金を払う仕組み。料金体系はよく分からないが、4角と言われた。10角=1元だから、6円くらい。
 さて、大山子芸術区へ。地下鉄2号線「東直門駅」下車、このあと、地下鉄13号線を探索して北側から地上に出たため、「東直門北」のバス停から688路バスに乗った。下車駅は「王爺墳」で、メモを車掌さんに見せ、1元払って、切符を貰う。車掌さんは、空いた席ならどこでも座るようだ。20〜30分で到着した。バス停から進行方向にさらに進むと、フェンスに「798」という赤い文字が見えてくる。高層アパートの手前を右に曲がっていくと、それらしいレンガ街が見えてくる。
 朝の雨で道がぬかるみ、あちこちで工事中。そんな中でも、若い子がたくさんデジカメを手に歩いている。とりあえず、片っ端から空いているギャラリーやショップを覗いて歩いた。結論から言うと、空間的にはとても面白く、ギャラリーと作品は玉石混交。団体で来ているグループもあり、訪問者の半分くらいは白人。あとは、おしゃれな若い人たち。客層は、日本なら、森美術館ICCに来ている若い男女の中国バージョンか。朝の10:30頃から夕方6時頃までいたが、午後遅いほど人が増え、毎日これだけ人が来ているのなら驚きだ。日本にこんなインターナショナルなスポットはあるだろうか?
 どんどん新しいギャラリーがオープンしているようで、工事中の場所がたくさん、今でも見て歩くのに丸1日かかるのに、今後どう膨張していくのだろうと思う。ちょっと目を転じると、稼働中の工場の煙突から煙もくもく(そんな煙と車の排気ガスで、北京市内は1日中霞んでいる・・・)、建物取り壊した空き地だとか、最先端のおしゃれな空間と、ゴミゴミしたものが入り混じった、不思議な一帯である。ガラス張りの事務室の中には、白人スタッフもちらほら。あとは、PCに向かったり、受付で座っているのは、髪の毛をウェーブさせた女性(北京のお金持ちは、ウェーブあてるのがはやりか?)。
 以下、気に入った場所や印象が深かったもの、作品など。順不同。
 ギャラリー「百年印象」、Hung Qingjun「家当」(2007)、パオ、船、土の家に住むそれぞれの人(家族?)と、家財道具一式を並べて家の前で撮影した写真で、3枚組み。船上生活のはずなのに、デスクトップPCがある・・・電源はどこから取るの?
 ギャラリー「3.15」は人気の空間で、おしゃれ。今は、「消費!消費!LET′CONSUME!」展が開催されていて、やってきた中国の団体さんが、大喜びで、Chen Wenlingの「幸福生活19」(メス豚の立体作品)の横で記念撮影していた。日本だと、現代アートがこんなふうに享受される場所はあまりないのではないだろうか。
 ギャラリー「卓越芸術」はWANG LU YAN「整体的背面」展を開催中だが、このギャラリーが変わっているのは、どでかい空間の床面が、丸くなだらかに盛り上がっているのところ。作品に合わせてなのか、もともとこういうつくりなのか。こんなのは初めて見た。
 地味でローカルなギャラリー「北京錦都芸術中心」、Zheng Wang「花之灵」(2002)シリーズ。3点、同じ名前で出ていたが、最初の1枚が一番気に入った。くすんだ金、茶、しぶい緑が少し入って全体としては、和紙に皺が入ったように見える、不思議な落ち着いた作品。こういう絵だったら買って、自分の部屋に飾ってもいいな(ただし家がきれいなら、の話で現実にはありえないが・・・)と初めて思った作品。
 ギャラリー「仁」、Gilles Perrinの写真シリーズ。大きなぬいぐるみを抱いて、列車で座っている男性や、マネキンを持って道を歩いている女性など。
 空間が素敵だな、と思ったのは、「平行線画廊」。古い窓をそのまま生かし、PS1をふと連想させる。
 「林冠画廊」も大胆に自然光をとりいれたギャラリーで、ここで開催されているMichael Kviumの作品は、今日見た中では一押しの作品ではないだろうか(家に飾りたいとは思わないが)。図録を売っていて買おうかとかなり迷ったが、150元でポスター付と言われて、止めてしまった。
 圧巻は、ギャラリー「長征計画」。映像作品がたくさんある本格的なギャラリーで、コインロッカーが自動的に開閉する作品や、Yu jiの「水牢装置」(2008)・・・これは、古い工場の荷物用エレベーター(リフト)空間を利用して、天井から水が降っているもの。天井から雨の趣向は、ZKMで見たことがあるが、リフト空間を利用したのがミソだろう。林天苗の「看影」シリーズは、糸や糸球を使った作品で、糸玉の作品は、初めて見る表現だ。日本人的にショックだったのは、Kum Soni「国外的大空」(2005)のビデオ作品。作家の国籍はKorea(Japan)と書かれていて、70分に及ぶビデオ作品。小泉さんなども登場するのだが、日本では恐らくこういう作品は見られないのではないだろうか。作品の完成度は、今一歩だと思うが。
 そのほか、UCCAという、大きなショップを併設したギャラリーがあり、ここの展覧会は30元取るらしい。次の展示は、明日がオープニングとのこと。
 外国人向けカフェや本屋も色々ある。トイレも洋式・ペーパー付。
 私はというと、地元民向け食堂を発見して、チンゲンサイとしいたけの炒め物(8元)+ご飯(1元)を堪能・・・これが、北京で食べた食事の中では、一番おいしかった。
 帰路は、418路バスで「東直門」へ。大回りするバスだったようで、40分ほどかかったが、ちょうど夕暮れどきで、北京のすさまじい人と車とバスの波を見た。ギャラリーはすべて無料で、交通費往復6元(84円ほど)だけで一日楽しく過ごせたのだった。
 写真は、ギャラリー「3.15」、Chen Wenlingの「幸福生活19」など(2008年3月21日撮影)。