万里の長城/建外SOHO

takibata2008-03-20

 鉄道で行くか、バスで行くか、ぎりぎりまで迷ったが、早起きできたので、鉄道に挑戦することにした。7時頃に地下鉄北京駅を出発、2号線「西直門」駅下車、この間20分ほど。A出口を出て、案の上、道を間違えた。人の流れについて信号を渡って行くと大きなバス停で、引き返す。次に曲がった道は、最新の地下鉄13号線方面。もとの出口まで戻って、出口を見張っているお兄さんに地図を見せて尋ねると、反対側へ行けとのこと。地下鉄出口に背を向けて、「左」が正解であった。少し行くと、「←北京北駅」の看板がある。その方向へ進んで行くと、やがて粗末な旅館の看板がかかり、出店が並ぶところを曲がっていくと、那覇の農連市場前か?と思うような光景が広がり、一旦通りすぎてから、「售票処」(切符売り場)の建物であることに気づき、引き返す。
 あらかじめ印刷してきていたネットの時刻表(6427列車、北京北発8:29→八達嶺11:07着、終点は沙城)と、10元札を窓口に差し出すと、おつり5.5元と切符を渡してくれた【この切符の買い方、駅までの行き方はこのサイトのおかげである】。窓口はガラガラで拍子抜け。前を行く乗客は、布団を下げた人とか、大きな米袋(荷物入り)を担いだ人など。察するに、布団持参だと安く泊まれる宿があるのではないだろうか。
 そこから少し先を行くと、屋根と売店だけがある駅の待合所。とてもカメラを向けられるような場所ではない。他にすることもないので、発車30分ほど前だが、緑の扉の行列の前に並ぶ。
 まもなく扉が開き、切符にはさみを入れてもらい、高架を渡ってホームへ降りる。チケットは全席指定で、2号車の75番。緑の硬座の列車で、2号車と、後方の別の車両だけに、乗客が集められている様子。車内は、進行方向右側が6人掛け、左側が4人掛けだった。75番は、6人掛けの3人シートの真ん中だが、とりあえず、窓際に座った。すぐに、左横に、若い男性が座り、やがて、窓際の席にも、おじさんが来た。反対側に移動すると、今度は、10人ぐらいの高校生ぐらいのグループが乗ってきた。おじさんがタバコを吸いにホームへ出る。女の子2人が向かいに座り、戻ってきたおじさんは、いいよ、と一番通路側に座ってくれた。
 さて、列車は出発。女の子たちは、カップ麺の蓋を開け、魚肉ソーセージをちぎって、カップ麺の中に放り込む。それから、お菓子を出して・・・かわいい女の子が、袋入りヒマワリの種を歯で割ってカリポリ・・・延々と1時間近く食べ続けていた(リスになっちゃうよ!)。美男美女のグループなので、見ていて飽きない。
 車外の景色はというと、おせじにもきれいとは言えない。北京は、緑がない上に土がむき出しで、川や水溜りは灰緑の怪しい色。排水がそのまま流れ込んでいる横にネギが植えられていたりする。民家はレンガ積で、線路沿いには墓地もある。最初は、石葺きのお墓だったが、すぐに土饅頭になる。墓碑があるのはまだましで、土饅頭だけのものも。殺伐とした風景である。線路際は、ゴミもいっぱい。
 「南口」駅を過ぎると、山桜だろうか、ちらほらと、線路際と山の中に、ピンクの花が広がる。きれいと思ったのは、それくらい。時節柄、落葉樹は裸で、埃っぽい松が唯一の緑だ。山の形は、日本とはずいぶん違う。茶色い岩が、まばらな木の間から飛び出している。駅ごとに随分長く止まるのだが、10:30頃だったろうか、窓の下に、「長城」と書いた門と駐車場と、長城らしきものが見え、あれ?と思う。手前にある「居庸関」だろうか??おかしいな・・・と思ううち、停まった駅に「→八達嶺」と、今来た方向に矢印が書いてある。あせった。乗り過ごし?まさか・・・若い子たちも、万里の長城のパンフを持っているし・・・心配になって、旅行記を取り出して読むと、スイッチバックと書いてある。なあんだ、と少しほっとし、随分と時間が経ってから今までとは反対方向に列車が動き出し、10分ほどで「八達嶺」駅に到着した。
 駅を出て、他のお客さんのあとについて車道を歩いていくと、919路バスの乗り場が見つかる(ここが大事な帰りの路線バス乗り場だ)。門前のみやげ物売り場が並ぶ中を進むと、「八達嶺長城售票処」に到着。40元でチケットを買い、中に入る。険しい北八楼を目指して上り始める。以後、階段を登ったり、降りたり、急な坂道を登ったり。
 そうこうするうち、賑やかな若者グループが、大声を上げながら、手をつないで坂道を走り降りてくる。わあ〜〜と見ているうちに、数人がどっとこけて大笑い。万里の長城は、若者の肝試しの場に使われているらしい。
 北八楼と思しきところへ到着。この先もまだ、長城は続いている。しかも相当なアップダウン。しかし、北八楼から先は人も少なく、静かないい感じで、思い切って先に進むことにした。急傾斜の下り道で、これを引き返すのは嫌だな、と思う。この坂道、高所恐怖症の人には無理だろうな、とか。手すりにつかまって、反対向きに下りる女の子もいる。ここでねんざとかしたらどうするんだろうか・・・とか。
 ガイドブックを見ると、「地球の歩き方」には長城の見取り図はないし、「新個人旅行」の見取り図は、なぜか、北八楼からあとは、長城がU字型にカーブして、途中で終わっている。公開されているのは、南は七楼まで、北は十二楼までらしい。上から見下ろすと、何だか、途中から下界に出られそうな様子。北十一楼まで降りてきたところで、最初に入ったところとは違う、ひなびた出口に行き着いた。もう未練はないので、そこから出ることにした。出口の看板には、「出口向右歩行十分□即919車駅」(□は読めず)とあり、安心する。ちゃちなクマ牧場があり、クマが2頭いた。
 看板どおり、出口右を、客引きに見向きもせず、すたすた歩いて、行きに見た路線バス乗り場に到着。まもなくバスが来て、すでにかなりの混み具合だが、「徳勝門」と書いたメモを車掌さんに見せて、乗り込む。バスは、通路を挟んで3人掛けと2人掛け。幸い、中央ドアのすぐ後ろの席が空いていたので、そこに座る。隣はミッキー柄の鞄を持った若い女性。バスの出発が13:15頃だったと思うので、2時間ほど長城にいたことになる。
 「919路快車」は高速道路経由、12元。車掌さんが切符を売りに来る。このときも、メモを見せてすんなり切符が買えた。途中で隣の女性が降りて、窓側につめると、なんと、車掌さんが横に座った。驚いたが、少ししてから、もしかして私の座った席は車掌さんの席だったのかも・・・と思う。そのうち、車掌さんがウトウト眠り出したのでさらにびっくり。若い、愛想のいい車掌さんで、「徳勝門」に着くと、席を立って、ここで降りなさいと教えてくれた。時間は15:00頃。「徳勝門」は、終点ではなかったようだ。「徳勝門」近辺は、バスターミナルになっている。人の多いほうへどんどん歩いて、10分ほどで地下鉄2号線「積水潭」駅に到着した。
 万里の長城往復交通費は、地下鉄2元+鉄道4.5元+バス12元+地下鉄2元=20.5元(約287円)で済んでしまった。入場料560円ほどを足しても、847円ほどだ。
 帰路、「積水潭」→「建国門」(地下鉄1号線乗り換え)→「国貿」下車で、建外SOHOを見に行った。周囲は工事中だが、カッコいいビル群になっていた。いかにも山本理顕さん設計の建物で、ガラスをふんだんに使った明るいつくり。1〜3階部分には、おしゃれなブティックや喫茶店などが入っていて、上からのぞける地下は店舗と駐車場で、テニスコートもあった。写真を撮って歩く。高層建築が夕日に映えて、ビルだけを見ていると、ミネアポリスかと思うほどである。・・・あまりに長くなったので、この話はまたいずれ。
 写真は、わくわくドキドキの北京北駅、沙城行き6427列車(2008年3月20日撮影)。