朝永振一郎さん

 注文していた岡本真『これからホームページをつくる研究者のために』(築地書館、2006)が届いた。通読して、一番印象に残ったのは、この本の中に転載されている森山和道氏の「研究者の方々へ、ウェブ日記のすすめ」の中で引用されている、朝永振一郎さんの日記である。
 延々と、研究がうまくいかない苦しみが書かれている。「さてそんなことでねられない。朝おきて、はみがきようじにはみがきとまちがえてポマードをつけたりして、よほどぼんやりしているのである・・・」(1938年11月23日)

ついでに、いくつか言い訳を。福島県立美術館の常設展に、「出口」から入ってしまったのは、「調査」のためではありません。本当にぼんやりしていたので、真似なさらないで下さい(そんな人、いないと思いますが)。
もう一つ、岡本さんの本を読んでいて、気になったのは、研究者の信条として、個人HPで公開した自分の見解を必ず保存しよう、という点と、内容を改変してはいけない、という指摘である(p.149)。私は、このブログを公開してから、何度か、ちょっとした表現の改変や、日記そのものの削除を行っている。前者は、文章表現へのこだわりであまり問題ないと思うが、後者は、リサーチが不十分なうちに、早まって書いてしまったものなどで、公開を見合わせたほうがよいと思ったものである。
一旦、ウェブ上に公開したものは、取り下げてはいけない、というのは、HP公開上の大きな心理的障壁になると思う。そのほか、岡本さんの本の中で勧められている、調査記録やインタビュー記録の公開、というのも、趣旨はよく分かるのだが、現実に国内におられる方々へのインタビューを仕事にしていると、とてもそれは難しいのでは、というのが率直な読後感だ。
岡本さんは、気軽にHPを作ってみよう、と勧めてくださる割には、授業関連情報の公開など、要求水準が高いように思ってしまう。ウェブでどのようなことが可能か、のガイドとしては役に立つけど、本書を読む前より、HP作成には少し慎重になった。