『指定管理者制度―文化的公共性を支えるのは誰か』

 ようやく読み終わった。伊藤裕夫さんの「劇場政策論の立場から指定管理者制度を問い直す 『公共劇場』の原点と展望」が一番面白かった。この分野を全く知らないからそう感じるのかもしれないが、一見当面の問題とは関係なさそうな劇場史から論じていて実はとても大事な点に触れている。

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 公共施設とは、政府が法律によって設けたものではなく、その時代時代の社会の中で特定のニーズに応えて生み出されてきた一種の「コモンズ」であって、それゆえ社会的ニースが変わればそれは不必要になったり、変革が求められたりもする。指定管理者制度は、こうした公共施設の成立過程や社会的使命についてはまったく頓着しないきわめて形式的なコストパフォーマンスを目指したものではあるが、しかしその導入に際し、公共施設のあり方の議論を引き起こすことで、今日における公共施設の社会的ニーズと使命について問い直すきっかけになったことは、怪我の功名ともいうべきであろう。(p.52)

 劇場(シアター)というのは決してハードな意味での「施設」(建築物や設備)ではなく、舞台芸術活動そのものであり、公共劇場とはそうした劇場を市民社会が必要としたことによって成立した社会制度であって、このことを前提としない指定管理者に関する議論は、少なくとも舞台芸術関係者の間では「無意味」と断言していいのではないだろうか。(p.63)

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 他の執筆者のも、いろいろと突っ込みたいもの、調べてみたいヒントも含め、参照文献として役に立ちそうだ。
 この本への田中孝男さんの紹介はこちら。http://www1.ocn.ne.jp/~houmu-tt/07-040201.htm