『最新事例 指定管理者制度の現場』

 続いて、井出信夫・吉原康和『最新事例 指定管理者制度の現場』(学陽書房、2006)を読み終わった。前半は、東京新聞記者の吉原氏による、全国各地の事例レポート。「かんぽの宿」を買い取ったものの、「廃墟の宿」のままの旧肱川町など、さまざまな分野が扱われていて興味深い。もっとも、小倉城の例で分かるように、異なる立場の当事者の主張を聞かないと、一方的な情報に終わってしまう危険はある。
 後半は、新潟産業大学の井出氏による実務編。吉原氏担当の前半でも触れられているが、事業所税にまつわる2005年11月の「総務省通知」については、この本で初めて知った。「課税に対する『公平性』『公正性』の観点から混乱が生ずるという、制度導入時において予期せぬ問題が発生したことから、課税するのか、課税しないのかについて、一定の基準やその考え方を整理する必要が迫られたのである」(p.212)とのことで、何とずさんな制度を作ったことか。井出さん(と、上越市)の受益者負担の考え方や、基礎的サービス・基礎以上のサービスの分け方(なぜ、レジャー公園が基礎的サービスで、公民館や博物館が基礎以上のサービスになるのかなど)、などには疑問を感じるが、指定管理者制度全般に関する実務的課題の提示という意味では勉強になった。
 この本へのむっちーさんの紹介はこちら。http://shitei.seesaa.net/article/17627662.html
 ちなみに、その後上越市では、指定管理者が倒産するという事態が発生したらしい。http://www.yomiuri.co.jp/e-japan/niigata/kikaku/098/14.htm

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さらに市にとって「想定外」だったのは、施設に市と指定管理者の財産が混在することだった。光ヶ原高原牧場は200〜500円の入園料で、放牧されたヒツジやヤギ、ロバ、ポニーなどの動物と触れあえる人気の施設で、2005年(5〜9月)は約3万人の入場者があった。ところが、約60頭の動物や牧場内の子ども向け木製遊具はすべて指定管理者側の所有物。市の直営になったことで、呼び物の動物は姿を消し、遊具にも「使用禁止」の札がはられた。(Yomiuri Online

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動物たちは、どこへ行ってしまったのだろうか・・・。