浦添市美術館

takibata2006-10-22

 21日、夕方のシンポジウムを待つ間、浦添に行った。きっかけは偶然で、神戸空港で買ったガイドブックにおいしそうなソーキそばの写真があり、その店の所在地を見たら、「美術館前下車、徒歩5分」と書いてあった。那覇バスターミナルから20分、と書いてあるのを信じて、バスに乗ったら、40分くらいはかかった。途中、横断幕をいくつか目撃。
 最初に、ソバ屋さんに寄る。「手打ちそばてだこ」といい、午後2時ごろなのに、次々と地元のお客さんが訪れる。カウンター周辺に、昔の沖縄の写真がたくさん貼ってある。正覚寺の写真の横に、「戦争は全てを破壊する」と書いてあった。
 件のガイドブックには、美術館の記述は何もない。道を尋ねつつ、探し当てる。プロムナードの長い、南国らしい演出。建物もこじんまりとしゃれている。
 特別展「現代琉球漆芸作家展」の最初の部屋を見始めると、女性スタッフが、「ちょうど今、前田さんが解説されているからいかがですか?」と誘われる。
 バッチをつけた初老の男性が作品解説をされている。かなり詳しく、個々の作品の技法や、作品の批評(どこをどう発展させていけば、もっとよい作品になるか)、各作家がどこで修行をされたかなどを話しておられる。バッチに目を凝らしてみると、館長先生らしい。
 津嘉山榮造さんの作品の側面につけられた堆錦のうずまきを例に、目立たないところに、手をかけた作品が後世に残っていく作品だ、と。また、他の作品では、黒いところをどう残して訴えるか、人の手を加えないところが(後世に)残る、と話された。内地でも作れるものは内地でも手に入るから、沖縄でしかできない伝統的な作品が、結局生き残る、というような趣旨のお話もされていた。
 最後に、延長で、参考出品の最初の部屋の解説もしてくださる。(株)紅房はじめ5つの会社からの出品と、県指定無形文化財琉球漆器保持者3名の作品が展示されている。その中に、この館長先生、前田孝允さんのお名前があった。
 帰りがけ、ショップで出版物を見つける(前田孝允『金龍五色之雲―復元の肝心―<首里城漆塗りのプロセス写真>』前田漆芸アトリエ、1998年)。前田さんは首里城の漆芸分野の復元を担当された方だったのだ。たまたま、会期中3回しかない館長先生のギャラリートークを聞く、またとない機会に遭遇したことになる。
浦添市美術館HPはこちら。http://8761234.jp/urasoe_hp/art/index.html