仙台市博物館

 28日、仙台市博物館へ。特別展「大江戸動物図館」から。涅槃図、屏風、杉戸絵、障子腰板、錦絵など、動物が描かれた作品のオンパレード。土曜ということもあってか、(朝10時でも)若い人や家族連れで見に来ている人が多く、動物ネタだからか、友人どうしであれこれ熱心に話している(今、HPを見たら入場者数1万人突破だそうだ)。
http://www.city.sendai.jp/kyouiku/museum/
虎の絵にインパクトがあり(岸駒、東洋、応挙など)、岸駒が入手した「虎の脚」やそのスケッチ、龍の骨と思われたトウヨウゾウの化石、大阪瑞龍寺の「龍、河童、人魚のミイラ」などが一緒に展示してあるのが、博物館らしいところと言えようか。
 そういうちょっと「怪しい」博物学的イメージを醸し出しているところを除けば、出陳されている作品の数々や企画力は、まさに美術館と比べて遜色ない。沖縄の話とリンクさせると、仙台市博物館では、館長先生のご専門が美学美術史だったのだ。http://www.tohoku-bunko.jp/details/history/00004.html
 それはさておき、特別展の出口のところに置いてある投票用紙が面白い。「『大江戸動物図館』展『みんなでえらぼ アニマルキングNo.1』投票用紙」というもので、お気に入りの動物(作品番号など)と、その理由、性別、年齢だけを答えるシンプルなもので、A4の紙を4等分したくらいのサイズ、これだと、気軽に書けるのではないだろうか。
 常設展。インパクトが強かったのは、「飢饉と城下の衰退」のコーナーの、鈴木三伯筆「天明飢死図集」(写本)で、天明3〜4年の登米郡佐沼地方の飢饉の惨状を描いたもので、「子孫のためにその惨状を描いた」との説明が書かれていた。写本に書かれた文字をきちんとは読めなかったのだが、餓死した夫の死体を動物が食べに来ている横で、自身の食料を待ちわびて放心している女性や、口減らしのために、簀巻き(?)にされて捨てられる人々。その横にあった、「間引きを戒めた図」(複製,原品:七ヶ宿町関泉寺蔵)。
 階下では、館の出版物の大セールをしていた。図録や収蔵資料目録などが7〜4割引き。
芦屋での研究会での話題(公立館の図録の在庫問題)を思い出すが、その話は長くなるので、またいずれ。『仙台市博物館三十年史』(仙台市博物館、1992)を300円だったかで購入。明治期からの宮城県博物館史から説き起こされていて驚く。終章には、同規模同性格の博物館4館(名古屋市博、神戸市博、栃木県博、埼玉県博)プラス宮城県美術館との運営状況比較図が掲載されている。仙台市博は、予算も人も少ないが、入館者数は一番多いぞ、というメッセージだ。
 また1階では、教育委員会の「語り始めた遺跡たち」展も開催されていて、こちらも固定したファン層があるようだ。全体として館のスタッフが表に出ていて、なじみの人たちとよく言葉を交わしていて明るい印象を受ける。
 三十年史によると、リニューアルの際、仙台市博物館と(株)乃村工藝社が、1986年度ディスプレイ産業大賞で通産大臣賞を受賞したそうだ。20年前の最先端だった展示技法(平置きの展示ケースと縦型ケースがアレンジされ、そういえば、すでにここで浮世絵の引き出し型展示が利用されている)を堪能した。引き出し型展示のルーツ探しはこちら。
http://d.hatena.ne.jp/takibata/20060807