沖縄シンポ(8)

 沖縄シンポの第二部「会場との質疑」を書き始めたいと思う。以下、司会とパネリストのみなさんはお名前を上げるが、フロアからのご発言は【参加者】として記載させていただく。沖縄の皆さんのそれぞれのバックグラウンドを存じ上げないので、聞き間違えていることも多々あるかと思う。その節は、遠慮なく、ご指摘いただきたい。自信がないところは()表記してある。

【川平】9月28日に県議会に陳情書を提出した。11月24日には、県議会の文教厚生委員会に代表が(呼ばれ、質疑応答で)事情を聞かれることになっている。これはまれなことで、県議(会)で、動きが出る。
【上江田】基本計画がどう扱われているのか。文化・教育が民間化されることの問題。マクロな視点から(考える必要がある)。僕の子どもが通っている保育所も民営化されてしまった。
【参加者】沖縄に来て5年目だが、博物館の中に美術館があって、なぜ、悪いのかと思う。鳥取県立博物館http://www.pref.tottori.jp/museum/homepage.htm のように、博物館の中に美術部門があってなぜ、いけないのか? 私が勤務する壺屋焼物博物館http://www.naha-okn.ed.jp/tsuboya/ では、来週の火曜日(10月24日)(指定管理者制度についての)会議が行われる予定だ。
【川平】博物館機能と、美術館機能は違う。美術館は、美術運動の拠点となるものだ。博物館と美術館をくっつけるのは例がない、公文書館と図書館をひっつける例がないのと同様だ。
【宮城】美術館と博物館は、なぜいっしょではいけないか。今回の問題は、基本計画が、博物館の基本計画、美術館の基本計画、それぞれが別々の理念で作られているのに、公で議論されることなく、一つにされてしまったことが問題だ。美術館と博物館を一つにすることで生まれる面白い可能性は否定しないが、(いきさつが)不自然だ。降って沸いたように言われても、納得できない。
【参加者】12年前のシンポジウムのメンバーだ。(当時)県に対する要望、意見を400ページにわたる報告書にまとめて提出した。県の直接の担当者が古い友人(だったこともあって)、行政の方に丸投げ(してしまった)。(今は)何一つ、期待もしていないし、要望もしない。パトリオットを屋上に設置すればよろしい。金沢21世紀美術館のような、ああいう美術館は欲しくない。身の丈に合った、50番目くらいでいい、日常的に出入りのできる、敷居の高くない美術館に。嘉手納が返ってきた祝賀美術館にしたらいい。美術館(列島だから)法外な値段で買っていく人がいるかもしれない。ビジネスチャンスとして狙う人もいるのでは? 国際通りの民芸品店みたいな(美術館になっても・・・)。
【参加者】県に訴えていることが、実行委員会にも当てはまるのでは? 今日のシンポジウムのことが、前島アートセンターのHPでアップされたのは、一昨日のことで、広報が遅いのではないか? 県民や美術を愛する日本中の人を見方につけて県と交渉するには、どうしたら成功するのか? 問題点(の指摘から)説得するための分かりやすい話があれば、と思う。実行委員会の希望するところ、実行委員会が目的としている陳情は、次はどうするのか?
【川平】関係者に声をかけたのが、8月あたりから。8月7日から文化団体への呼びかけを始めたが、19団体の意見をまとめるのが精一杯だった。いろんな意見の差が出る。バラバラな意見では難しい。(別のグループで立ち上がった会議、シンポジウムがあり、読めないところがあった。)11月の県議会まで時間との勝負だ。
【安座間】この会の「美術館問題について大いに語る会実行委員会」という名称は、「県立博物館新館・美術館のあり方を語る会」を皮肉ってつけた。状況がよく分からないところから始まっている。問題は、5月の「語る会」以降で、指定管理者制度を勉強する会から考えなければならない。(12年前には)報告書を出した時点で解散してしまい、(その後)出来ない状況が続いている。(美術館に対して)真剣に期待している人が少ない。何も言わないのはおかしいと思って、新聞に投書した。個人でやっているが、組織を作っていかなくてはいけない。理解を深めながら。明確な目的を作って(ほしいとのご意見があったが)、どんな作業になるか考えてほしい。問題をまず共有しないと(いけないが)、意見を聞いた上で、無理やりまとめるしかないのではないか。(最大公約数的なレベルで、県の反応が出てから、情勢がどう動くか分からない。)
【参加者】昨日、今日の話ではなく、沖展http://www.okinawatimes.co.jp/ote/okiten58.html
の(頃からの)運動があった。歴史的に重みを持ち、署名運動もやった。美術館はつくらなきゃならない、という重みがある。(当時は)マスコミが率先して運動した。今、マスコミは傍観者になっている。大事な文化の目玉として(私たちは)美術館を考えてきた。こんないい加減なことで(は)、行政の文化に対する民度の低さ(が露呈している)。沖縄タイムス琉球新報は、自分たちの問題として捉えているのか? マスコミも、県民の文化として考えているか? 動いているか? 亡くなった人も含めて、(これは)沖縄の文化の問題だ。県民の心が息づいていく美術館をつくっていくべきだ。
【宮城】情報アップの遅れ、というご指摘があったが、閉ざしていたのではない。問題共有が最も大切だと思う。これまでにも、美術館が必要(だということで)12年前、シンポジウムが開かれ、構想からシンポジウム、計画へと、大きな動きだった。提言、報告書を作って、県に投げたが、県はずらし、すり替えていった。共有の場やビジョンを、どう県は約束して守っていけるのか?

 本番のシンポはこのまま、まだまだ続くが、一旦ここで休憩。この質疑応答の中で気になったのは、当日も発言させていただいたのだが、事実の部分はもう少し正確につめたほうがよいのではないか、という点。細かいことなのだが、例えば、図書館と公文書館の複合施設もあり、公文書館と博物館の複合施設もある。
新潟県立文書館 http://www.okinawatimes.co.jp/ote/okiten58.html
長野県立歴史館 http://www.npmh.net/bunken/index.html
複合施設の是非は別として、そういう細かい事実認識のところで、聞き手が混乱するのは避けた方が得策だと思う。私などは、つい、そういう細かいところに引っかかってしまうので、「全国に例を見ない」と言われると、そこで思考がストップしてしまう。
 こうして、書きながら考えてゆくと、問題の本質は、行政改革を急ぐあまりの、県の手続きのまずさにあるのではないか、という気がしてくるのだが。

 写真は、「今日の」ならぬ10月22日の横断幕。識名園前にて。