沖縄シンポ(9)

takibata2006-11-04

 第二部の続きを。この部分は、議論の展開に息をのんで、十分にメモが取れていない。肝心の部分が抜けてしまっているが、ご容赦いただきたい。

【島袋】(シンポジウムの)第二回をやったほうがいいのではないか? 合意形成には時間がかかる。
【小林】県の美術館が健全に運営されているかチェックするシステムを作ったほうがいいと思うが、(この)実行委員会がやっていくというわけではなく、このようなことが2度と起きないように、美術館に市民が積極的に関わるシステムを作る必要性がある。設置条例は(おそらく)2月議会にかけられると(思うが)それに間に合うかどうか。実行委員会もあせってしまっては(いけない)。美術館の開館を延ばせばよい。
【上江田】実行委員会のメンバーでも確認できていない。川平さんはじめ、無茶をしながらここまでやっとたどり着けた。
【安座間】(この実行委員会の)責任者は、自分ひとり。明文化した形になっていない。自分が代表になったが、そうでもしないと、進まない。実行委員会=シンポジウムではない。
【参加者】指定管理者になれる団体があるのかどうか。壺屋博物館でも、指定管理者制度の(導入が検討されているというお話だったが)、沖縄は直営施設が多く、能力のある財団が沖縄にはないので、心配だ。
【小林】受け皿になる財団がないところでは、民間が選ばれる。外郭団体を新しく作るのは無理で、すでにある財団をてこ入れするしかないのではないか。(民間の参入を許すか否かは)どのように美術館の仕様書を書くかによる。
【参加者】オープンする前にやらなければいけない議論の優先順位をつけるべきだ。(指定管理者制度のことと、学芸員のこととを県に要求し)、美術館が美術館としてできた暁に、(そのあと、シンポジウムやワークショップですべきこともあるのではないか。)
【参加者】基本計画と、事業活動計画と。1993−1995年の基本計画策定までの、具体的な論議のデータを知る術はあるのか? 当事者以外(は分からなくなっているのではないか?) 「現代」がくっついていたことに興味がある。なぜ、ついたか?
【小林】基本計画の冊子は、県庁の2階の情報センターと、県立図書館、公文書館にある。県のHPにも全文載っている。
【参加者】報告書は、NPO琉・動・体で50冊保存している。報告書を参考にして、名称が「沖縄県立現代美術館」となった。“out of Japan”、山梨県立美術館で、ミレーの絵を買ったことに象徴されるような、西洋近代美術から脱却していこう、という意味で、“out of Japan”を(掲げた)。県のHPでは、H7(1995)年度の基本計画がそっくりそのまま掲載されているが、http://www-edu.pref.okinawa.jp/kensetsu/art_museum/002keikaku/index.html
鏡に、「沖縄県立博物館新館・美術館」と、いつのまにか変わっている。2003年に文化振興課は、「沖縄県立現代美術館(仮称)」としていたが、2005年4月頃から急に変わっている。教育庁に移った段階で改ざんされたのか? 県も、相当混乱しているのではないか?
【安座間】「現代」は戦後の美術の流れ(を踏まえたものだ)。シンポの影響が強く、県の検討委員会の流れも変わった。県は、「現代」が入ると、敷居が高い、誤ったイメージを与える(と言っている)。
【川平】1993年の基本構想検討委員会では、現代をテーマにした美術館、テーマ性を持たせた美術館(を打ち出していた)。
【上江田】当事者意識、主体者がどこなのか? 中央政府都道府県という仕組みの中で、県は言われたから美術館つくる、(では。)行政に対する追及は、燃え尽き症候群になってはいけない。
【島袋】大切なことは、適正手続きだ。「語る会」は、何の権限か分からない。諮問―答申でないのに、役所の意思決定過程になるのか? 単に県庁の隠れ蓑になってしまう。設置要項があるのかもしれないが、「語る会」には何の意味もない。開かれ、議事録が公開され、傍聴ができないと手続き上問題がある。例外は、企業の営利やプライヴァシーに関するものだけで、こうした手続きを経ないで決めた(ものは意味がない)。住民参加は、公募で選ぶ、住民委員会を作って、原案を市民に作ってもらう。その方が安くつくし、稼働性が高い。一番中心になって使う人。美術団体の意見を聞かないで、(どうするのか)。積極的に(美術館運営に)加わる意志のある人(に加わってもらうべき)。(県の)狙いは観光客が対象か? 誰のための美術館か? 公開性や、適正手続き、主に使うであろう団体の意見を聞く、このプロセスが踏まえられていない。政治的な意志の問題だ。
【参加者】「語る会」も問題だが、「語る会」より、「行政改革懇談会」の方が問題だ。(文化・芸術のこと、)お互いに相手のことを無理解、不勉強(ではないか)。
【島袋】税金補填の合意が得られるかどうか。カットする対象を、職員が選ぶのは無責任だ。何が県民のニーズなのか? 議論しないといけない。県民全体で共有し、議論された形跡がない。何が一番重要なサービスなのか? 政治的意志で決定すべき。相互の働きかけが必要だ。沖縄はハコものをどんどん作れるが、運営管理については補助金が出ない。(金のかかるものからカットするというのではなく)懇話会の中でも何を優先するか、哲学を明らかにしないといけない。
【参加者】県会議員で、文教厚生委員会に所属している。美術館は独立採算制(になじまない。)沖縄の魂だ。県民の民族の誇りだから、文教厚生委員会では、美術館本来のあり方を話してもらって、11人の県会議員が納得すれば・・・。
【参加者】NPO沖縄文化ネット(をやっている)。うるま市でも、(指定管理者制度導入が)実際に進んでいる。http://www.city.uruma.lg.jp/DAT/LIB/WEB/1/g-news-14.pdf
(私は図書館に6年間勤めていたが)図書館、芸術劇場、体育館(など)。(行政と市民との)コラボレーションが見えてこない。NPO法人作って、受け皿となる。うるま市で、進めていこうではないかと。県内各市町村で、団体をつくる。どういうトレーニング、財源がいるのか、県民のものとして運営、自分たちでやろう、県民の側に取り戻すセーフティーネットを(つくったらどうだろうか)。
【上江田】NPOと、NPO法人とは、分けて考えたほうがいい。(NPOをやる側は)2足のわらじで、自分のところも、17年度からは事業が打てなくなっている。財源や、実働で働ける人がいるのか。意志の確認が必要だ。
【宮城】アートNPOリンクhttp://arts-npo.org/ のアドバイザーもしているが、美術やアート関係団体の財政基盤は貧弱で、美術館運営を任すことのできるNPOは、全国的に見てもない。10年くらいかけて、育てていくしかない。

 私のノートのメモはここで終わっている。突然、上江田さんに発言を求められ、この時は本当に困った。お話の流れを聞いていて、私のようなヤマトの人間が、ここであれこれ言うことははばかられたからだ。シンポジウム全体を通じて、色々な新鮮な驚きがあったことは確かだ。“アウト・オブ・ジャパン”というコンセプトがその最たるものだろう。西洋近代の美術と美術館を当たり前のようにお手本にしてきた日本人。それを越えるものを沖縄で見たいと思うし、その可能性はすでに芽生えているのではないだろうか。
 細かいことで言えば、地域総合整備事業債で建設されているはずの、沖縄の県立美術館が、http://www.pref.okinawa.jp/aes/2005hyoka/2005/jiko/ed/cico/jiko_cico1-1.pdf 開館時期を延ばすことが可能かどうか、これは、国と県との交渉になると思う。
 一番、気になったのは、沖縄のみなさんがどのような美術館を求めているのか、という点で、美術館の建設運営に際して、美術家団体の意見を聞けばいいのか、という点が、島袋先生のお話を伺っていて気にはなった。行政上の手続きの問題がまず第一の問題点で、その意味では島袋先生のご意見の通りだと思うが、どのような美術館を望むのかについては、シンポジウム参加者の間でも、まだ相当幅があるのではないかと感じた。ただ、さまざまな立場の人が、こうして1箇所に集まって、美術館について4時間以上も熱く議論できる、そのこと自体が、強い驚きだった。
 このあとは、前島アートセンターでの楽しい2次会がある。それは、また明日にでも。