前島アートセンターの夜

takibata2006-11-05

 さて、沖縄のシンポジウムが跳ねたあと、かねてUさんから、前島アートセンターで2次会、と伺っていたが、どうやって会場まで移動しようと思っていたら、運よく、Kさんに拾っていただいた。Kさんに拾っていただいたのは、大変ラッキーで、道々、色々なお話を聞かせていただいた。ちょうど、県立の美術館建設現場を通りかかり、あれがそうだ、と教えていただく。暗いし、車の中からちらっと見ただけなので、ただ、あまりにもその大きな塊に、驚いてしまった。シンポジウムの中で、「要塞」という言葉が使われていたと記憶しているが、あれではまさに要塞だ。
 Kさんのお話では、琉球のグスクをかたどったデザインだそうで、あれ見てわかるでしょう? と。私は私で、来年4月開館予定の横須賀美術館の開放的な建物
http://sakuma.mo-blog.jp/photos/bijutsukan/index.html (こちら賛成派の佐久間議員)
http://www.hide-fujino.com/diary.htm(こちら反対派の藤野議員、10月11日の項)
と、思わず比べてしまった。何と皮肉な話ではないだろうか。市民約6万人の反対署名が集まった横須賀に、開放的な美術館建築が完成し、県民の熱い建設要望がある沖縄で、要塞のような建物ができてしまうとは。いや、明るい時に見れば、また印象が変わるのかもしれないが。
 前島アートセンターでは、Tさんのドイツ・バー。ソーセージやビールを楽しむ。パネリストのMさんのお話を聞かせていただくうち、徹夜でふらふらの安座間代表が、募金箱に集まったお金を数えだす。お手伝いすればよかったのだが、おしゃべりについ夢中になる。そのうち、夜も更けて、斜め向かいに金髪の男性が座ったと思ったら、この方がTさんだった。それで、農連市場の話題になり、まだ前のまま、と聞いてほっと胸をなでおろし、日曜が定休日なら明日行けなくて残念、と言い、農連市場周辺の再開発の話になって、つい酔った勢いで、「あの話は無理ですよ」と言ってしまう。そしたら、Tさんが真顔で、「どうしてそう思いますか?」と突っ込んでこられて、しまった、と思った。
 その時、いい加減なことを言ってしまったが、私が農連市場を知ったきっかけは、そもそもTさんの活動にあり、何か大切なことを伝えそびれてしまったような気がする。「無理ですよ」と、言ってしまったのは、農連市場は、今のまま残ってほしい、大きなマンションの下層階に組み込まれてしまっては、あの味がなくなって残念だなあ、という気持ちがあったからだ。防災という観点からは、再開発が必要なのかもしれないのだが。何の根拠もなしに、いい加減なことを言ってしまったのが恥ずかしい。
 それから、真向かいに、前島アートセンターが入っている旧高砂殿ビルのオーナーさんが座られ、「ぼくのやっていることは、何かの役に立っているのだろうか?」と、こちらも真顔で聞いて来られる。これにも驚いて、「もちろんですよ」とお世辞抜きにこちらも真顔で答える。毎月、赤字をご自分で補っておられる、というオーナーさんが、何度も何度も心配そうに皆に尋ねておられる姿に、頭が下がる。
 気がつけば深夜の2時を回っている。こんな時間まで外にいるのは、普段では考えられない。自宅に戻ってから、シンポジウムの会場でいただいた、前島アートセンター会報誌a-newを読む。

 もし、県が開館後の運営について悩んでいるのであれば、私に素敵な案があるので耳を傾けてほしい。
 まず、開館前に建物を売る。(指定管理にせよ、県直営にせよ、文化施設で黒字が出せる訳がないので、最初から持たない方が良いに決まっている/それでも他公共団体が取り組むのは経済価値では計れない価値、意義を見いだしているからだが。。。)そして、わずかながら組んでいたと思われる美術館運営のための予算を前島アートセンター運営に使う。そのほうが、上記のようないい加減な取り組みをしている県より効果的な活用ができるはずだ。
 宮城潤(前島アートセンター理事)「突然ですが、来年オープンの沖縄県立現代美術館を大いに語る」第二回『a-new』2006年7月号

 写真は、前島アートセンター(2005年3月撮影)