「数学するヒトビト」

 11日から朝日新聞夕刊で連載の「数学するヒトビト」が面白い。1回目(11日)の加藤和也さん。留年中に友人から借りた代数学の教科書を見て数学に目覚めたそうだ。「教室」は山の中。助手時代には、斎藤秀司さんと歩きながら2人で数学の構想を練ったという。
 2回目(12日)の佐藤幹夫さん。「きょうも一日数学をがんばるぞ、と言っているようでは、とてもものにはならない。夜、数学を考えながら寝て、朝起きたときには数学の世界に入っていなければならない。自分の命を削って数学をやるくらいでなければ、とてもできない」と語ったそうだ。頭の中での数学を他人のわかる形にするには手間と時間がかかるのが佐藤さんには面倒だった。代わりに新しい数学を考えるほうがいい、と論文をめったに書かなかったらしい。若き日、苦学の佐藤さんは、高校教師の傍ら夏休みをかけ、パンツ1枚で計算をしていた。
 4回目の今日は、『大学への数学』と受験数学界のお話。入試数学史上最難関の問題を、「高校数学で見たことがない。そういうのにへこたれない心の強さを計るのは大切」と評価する予備校講師の安田亨さん。『大学への数学』の「学力コンテスト」。フィールズ賞受賞者の森重文さんは、この「学コン」で「徹底的に考えることを教えられた」と。
 胸にじんとしみるのは、高校時代、今で言う不登校の(数学の授業が怖くて学校に行けなかった)私を救ってくれたのが、某社の通信添削だったからだ。上野千鶴子さんの『女という快楽』に出会ったのも、この通信添削。
前職の予備校では、医進クラスの冬期講習で南木佳士の『医学生』をプリント配布、浪人生たちと1回きりの楽しい時間を過ごした。
学ぶことの原点を思い出させてくれる「数学するヒトビト」。担当は、内村直之記者。