博物館法改正に伴う意見交換会(1)

 今日、お茶の水女子大学を会場に、全国大学博物館学講座協議会(全博協)による「博物館法改正に伴う意見交換会」が開催された。現在、文部科学省のもとで進められている「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」での検討内容を、メンバーお二人(鷹野さん、水嶋さん)から報告していただき、全博協の会員校から質問・意見を出そうという趣旨である。
 11月28日の朝日新聞の部分的な(先走った)報道を見て、驚かれた方も多いと思う。
http://www.asahi.com/culture/news_culture/TKY200611280356.html
今回は、全博協の委員長大学から委員大学にアナウンスが回り、「今般は、さしあたって全国委員をお引き受け戴いている各大学へ意見交換開催をご案内しますが、近隣の大学・博物館施設などにもお声を掛けて戴き、ご意見お持ちの方のご参加を」ということだった。
 まず、水嶋さんと鷹野さんから、協力者会議での検討内容をご報告いただき、その後、文科省が作成した「新しい時代の博物館制度の在り方について(たたき台)」(未定稿)2枚と、「学芸員資格要件の高度化の方向について(案)」についての質問、その後、休憩を挟んで意見を出す、という形で進められた。司会は、東北学院大学の辻さん。午後1時から始まり、4時半頃まで(時間ははっきり覚えていないが)、ホットな意見交換が行われた。参加者は30名くらいだろうか。博物館法がらみでこんなに盛り上がったのは、初めての経験である。
 今日は、まず配布資料を紹介しよう。スキャナがないので、資料を手入力で再現する(アンダーラインや網掛け部分は反映できていない)。

未定稿
新しい時代の博物館制度の在り方について(たたき台)
1.博物館の現状
 館数、利用者数、学芸員数(法制定時からの変化も含めて)
2.なぜ博物館制度の見直しが必要なのか(必要な視点)
○昭和26年に制定後、55年間抜本的な見直しがされていない。
→博物館数や館種の増大、博物館の役割の多様化等、実態に合わない制度
○利用者のニーズの多様化、高度化
生涯学習社会の理念の実現(国民の生涯学習を担う施設としての博物館の望ましい在り方、博物館を支える人材の望ましい在り方)
日本博物館協会など、博物館法改正に向けた各種要望(日本博物館協会など)
中央教育審議会生涯学習審議会等における博物館制度等見直しに関する提言
○諸外国の動向
地方分権、民の力の活用
3.博物館の目的
生涯学習社会の理念の実現
・社会教育の奨励
・国民の教育、科学技術、学術及び文化の発展への寄与
・レクリエーション、enjoyment
4.博物館の定義
(現行博物館法の博物館の定義)
・歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集し、保管(育成を含む)し、展示して教育的配慮の下に一般公衆の利用に供し、
・その教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行い、
・これらの資料に関する調査研究をすることを目的とする機関
・「博物館資料」とは、博物館が収集し、保管(育成)し、又は展示する資料をいう。
   ↓
新しい形態の館をどうとらえるのか(新しい「博物館」のメルクマールは)
(例)
・科学館
天文台プラネタリウム
・まちなみミュージアム
・教育普及は行うが収蔵品を持たない館
(博物館法の対象となる設置主体)
○博物館法の対象をどこまで拡大すべきか
・国、独立行政法人
・大学附属博物館、民博等大学共同利用機関
・首長部局所管博物館(地方独立行政法人
・株式会社
NPO法人
・個人
→株式会社、個人が設置主体となるかが焦点
5.博物館登録制度の在り方
○現状の問題点
○制度見直しの基本的方向
○審査の担い手
○審査基準の内容、審査方法
6.学芸員制度の在り方
○現状の問題点
学芸員学芸員補資格要件の見直し(実務経験との関わり)
学芸員より上位の専門資格の必要性(職務、機能、役割、呼称等)
○資格審査の主体、方法
○更新性の可否
7.その他
○公立博物館の入館料原則無料規定の扱い

学芸員資格要件の高度化の方向について(案)
1 前回までの議論を踏まえ、以下のとおり整理する。
 学芸員資格で証明すべき専門性として、現場において培われる実践的な能力や高度な研究能力をより重視することとする。
 大学における「博物館に関する科目」は前述の専門性の礎となるよう、科目編成や単位数についても見直し必要に応じて拡充する。
 具体的には、大学等における「博物館に関する科目」の修得(現行資格に該当)の後、以下のいずれかを資格取得の要件とするよう見直す。
  ○博物館における一定年数(例;登録博物館5年以上)の実務経験
  ○博物館に関する専門的な科目(インターン経験等実践的な学修)、修士課程以上修了(又は修士相当の論文・経験・実績修了)
  ○国家試験の合格
※なお、この場合、大学での所定の単位履修者の扱いは、
①「一定の実務経験を有した後、学芸員となれる者」(条件付学芸員)という扱いとするのか、
②準学芸員(仮称)という新たな資格または呼称とするのか
という点を整理する必要がある。
2「上級(専門)学芸員」資格の創設について
・ 博物館において一定の実務経験(例;登録博物館において10年以上)及び十分な実績を有しているものについて、国または関係団体が実施する研修を修了し、審査試験に合格したものに対し上級資格を授与できる制度あるいは認証の仕組みを準備
・ 「上級(専門)学芸員」資格取得後は、定期的に(例:10年に一回)新しい知識技術を習得する研修の受講、試験審査を実施するなど、継続的にスキルアップを図るための現職研修の実施についても検討を要する。

 配布資料は以上である。この意見交換会のメモは、ノート15枚分くらいあるので、何回かに分けて報告したい(論文なりエッセイなり書いてしまったほうがいいのでは?と思わなくもないのだが、質疑応答・議論そのものが面白いので、素材として提供しよう。とにかく、この手のディスカッションは、極力オープンにしていく必要があると考えるからである)。

 鷹野さん:10月から検討協力者会議が始まった。主査は中川志郎さん、副主査が水嶋さん、あとのメンバーが佐々木秀彦さん、高安さん、名児耶さん。水嶋さんからお話いただく。
 水嶋さん:文科省主導で行われ、ご意見をいただいても答える立場にはない。答えようがない。検討者会議は今までに4回やっている。1回目は総論で、2回目は11月1日。3回目が11月21日で、この回の議論が朝日新聞に掲載された。(この回は、出張で欠席したので、詳細は鷹野先生から聞いてほしい。)4回目が12月13日。

 今日は、ここまで。以上は私のメモに基づき再現したもので、文責は瀧端にある。ミスタイプ等があればお許しを。