博物館法改正に伴う意見交換会(6)

 今日で(先ほど)、年内の授業が全て終了した! で、今日からは完全にスイッチを切り替えて、研究モードに突入。授業をしながら論文を書くのはしんどい。頭がぐちゃぐちゃになってしまう。昔の先生のように、自分が今書いているネタで授業ができて、年度末には論文が1本完成!だとどんなにいい(というか面白い)だろう。毎年この時期、なぜ1年近く先の授業のシラバス出さなきゃいけないの?と思う。ぜんぜんフレッシュでない。
 それはさておき、「意見交換会」の続きを。どこからレジュメの3・4番に入ったのかは今となっては定かではない。

Q:3【博物館の目的】にコレクションのことが出ていないが?
M:いっぱい書く予定だ。3は書きかけだ。前回指摘があったのだが、ここ20年、マネジメント・教育・情報発信に(注目があたってきたが)、より戻しが必要ではないか。資料収集の予算がゼロという館がある。
Q:法体系は現行と同じなのか?
M:変わらない。
T:現行でも教育機関だが、教育基本法の改正で、より狭く社会教育機関と固く決められた。
司会:では、4・5について。
Q:審査の第三者機関については?
M:言葉として出て来ない。国・独立行政法人の館を登録させるのか?審査をどこが扱うのか?NPO立、法人立はどうするのか。登録も認定なのか評価なのかの議論がある。評価と登録を結びつけるのか。
Q:(第三者機関がやるにしてもその)中身は時間がかかる。館種ごとの見直しをするのか? 手間ひま(の問題は考えているのか?)
T:3月までに方向性を出す。動水協では入会審査基準があるそうだ。これは外国とのやりとりをするときに(必要だそうだ)。
Q:博物館の自律性については議論されたのか?現在の登録制度なら、登録博物館は教育委員会の所管で首長部局からの独立性があるが。
M:自律性の議論はない。
司会:(審査については)第三者機関なら、自律しているのではないか。
T:評価を専門とする評価機構のような組織もあるから、そこに委ねるという方向もある。
Q:現行の登録制度の形骸化が問題なのか、それとも博物館の社会的使命が高度化したという認識なのか、あるいは大学評価(のような流れなのか?) 登録制度だけにこだわらなくてもいいのではないか?
T:1000館ぐらいしか博物館法の体系の中に入っていない現在の登録制度自体がおかしい。話していくうち、博物館をよりよくしていく制度になっていないと・・・。
Q:選別の流れではないのか? 登録博物館とそれ以外と、という。
T:どういうメリットを与えるのか? 例えば名称を登録博物館に専有化、独占化させるということは主張しようと思う。税制上の優遇措置とか公共性のお墨付きを与えるとか。消防署が○適マークを出しているが、オランダでもやっている。これは私見だが、たとえば科研費の申請母体になれるような。
M:21世紀のあり方、ビジョンを示すような。高い理念を。イギリスでは最低基準を満たすと外部資金が導入しやすくなる。ミニマムスタンダードが社会的に保障される制度になっていれば。

 とりあえず、一旦ここで切る。自律性の質問をしたのは私だ。会が終わってから知人には、あの質問の意味が分かったのは僕だけだと思うよ、と言われてしまった。うまく質問できなかったのだ。
 私がずっと気にしているのは、「教育行政の一般行政からの独立」の問題だ。現行博物館法では、登録博物館になれるのは、公立博物館の場合、教育委員会所管の館だけである。だから、県立クラスの大規模館で、登録博物館になれない館がある。このことを指して、登録制度の形骸化と見る向きも多い。教育委員会の下にあるより、首長部局の下にある方が大型予算をとりやすいと判断をする美術館関係者は多い。また動物園・水族館などは、もともと他部局が持っているケースが大半だろう。また今回の議論でも明らかなように、博物館関係者は、博物館を教育機関と位置づけられることが不満なのだ。ましてや社会教育法の下位にあるとは、と不満な人が多い。
 教育委員会の実態や今後がどうであれ、複数メンバーによる合議制の機関という教育委員会本来のメリットを意識する人は博物館関係者ではごく少数なのだ。首長の意向をダイレクトに反映させない自律した機関として博物館を位置づける工夫が必要だと思うのだが、このあたりは議論していないとのこと。問題意識にも上っていないのではないだろうか。
 それにしても、お金をもらうために、公共性のお墨付きが必要というのは、順番として逆なのではないか。潰されないために、にわかに教育事業に精を出すのと同レベルだ。○適マークというのも違和感がある。お墨付きがないと、自分の行きたい博物館、寄附や助成を出したい博物館が分からないというのを情けない話とは思わないのだろうか。後者は税制優遇措置の話が絡んでくるので、確かに「個人の判断」だけで済まない話になってくるのだろうが。こう考えていくと、納税者に対するアカウンタビリティーの観点から考えていくのがよいのかもしれない。
 これまで幾人かの人たちと議論を重ねてきたことだが、まずは、現在及び将来の利用者(税金だけ払って今は利用していない人も含めて)の権利の保障から法の条文を構成していかねばならないはずなのだが。