沖縄フォーラム(15)

 ディスカッションの続きを。

宮城 抵抗(という言葉を使われたが)、今回のフォーラムは、(僕が)中心になって企画した場で、抵抗というより、先に進んでいるようなビジョンがつくれないか、前に進むためにどうしていくのか。こうしようというスタンス、前島アートセンターとしては、美術を通じて社会にどう関わりをつくるか、美術館を前提として、NPOの主体性がない(状態で)1年間動いている中で、(県に対して)Noと言っていたけど、疲れちゃったな、Noで疲れるなら、生み出すことをしないと、このまま疲れてくる。
 パロディで、沖縄の現代美術がどういうものか、「沖縄現代美術缶」をつくったつもり。装置によってつくられた空間。「抵抗」には、反論したい。状況に対して、自分たちがしたいことをする、クリエイティブでないと。経験も知識も、ビジョンもないので、この場を皆で考えていきたい。
ティトゥス 大事だと思う。飲み込まれると感じるけど、沖縄の美術は、美術館とはあまり関係ない。それと別のコアで、必要と思う。アートの世界、ヘビの前のねずみでなく、別のコアをつくって、距離感とって、アーティストの武器、想像力、表現力をつかって、たたかうのが重要。多面的なアプローチがあると思う。沖縄は力があると思う。どこでその力を伝えるか。僕は(沖縄の)美術館、理念とは違う(と思う)、全体的に作り変えないと、場、できない。
小澤 16時間美術館は、移動可能で、前島は一つの候補地。そのために、お金を集めなければいけないけれど。
 沖縄美術の可能性。カリブ島に群島美術館というのがある。沖縄は本島だけじゃない、アイデア、概念、上手に伝えられる美術館になってほしい。

 宮城潤さんから、「沖縄現代美術缶」の紹介があり、また会場の後部では、実際にこの「沖縄現代美術缶」と、そこから映し出される映像が展示されていた。宮城さんのつくったチラシの言葉も感動的である。以下、紹介させていただく。

全国で最後発となる県立美術館が、今年11月沖縄県でオープンする。建設計画が立ちあがった当初より沖縄の地域性を活かした特色のある美術館を理念とし、1995年には「沖縄県立現代美術館」として基本計画が策定された。しかし、開館直前となった昨年、本質的な議論のないまま、県立現代美術館は博物館新館と統合され、名称から“現代”が取り除かれた「沖縄県立博物館・美術館」として開館することが決定された。そこで、NPO法人前島アートセンターは、沖縄県がつくることのできなかった「現代美術館」を自らの手で実現することにした。前島アートセンターは、今年1月に入居するビルの経済的理由からスペースを失った。その経験から“移動可能な美術館”をコンセプトとして、どんな小さなコミュニティにも入り込み現代美術の魅力を伝えることができる世界最小の美術館「沖縄現代美術缶」を生み出した。「沖縄現代美術缶」は、沖縄県内外あらゆるところに出没し、沖縄の美術館はどうあるべきか、市民が参画し議論できる場を創出する。
戦後、沖縄の人々は捕虜収容所で米軍支給の空き缶、木切れ、パラシュートの紐を使った「カンカラ三線」を生み出した。「カンカラ三線」で歌い踊ることで、貧しい時代を強く陽気に生き、今日の豊かな芸能を育むことができた。県立美術館の開館をめぐり、その貧しい状況が明らかになった沖縄の美術を取り巻く社会。「沖縄現代美術缶」は、カンカラ三線のように、空き缶(ドラム缶)で沖縄の現代美術を創り出していく。
NPO法人前島アートセンター)

写真は、「沖縄現代美術缶」(フォーラム会場にて、2007年3月31日撮影)