INAXライブミュージアム

 見学実習の下見に、愛知県常滑市INAXライブミュージアムを訪れた。なぜ、ここを候補にしたかと言うと、非常勤のTN先生のご提案による。TN先生は、他大学の学芸員課程(通信)も担当されていて、受講生の一人が、今度常滑INAXのどろんこミュージアムができるとレポートを出したそうだ。おそらく社会人の学生さんだろう。レポートを読んで面白そうだから、来年度の見学先にどうだろうという話になったのが昨年のこと。とにかく一度、見てこないことにはということで、日曜日、訪問した(もう、日が変わってしまった)。
 お昼どきに着いたので、レストランに入る。満員で、10分ほど待つ。明るいガラス張りの店で、テラス席もあるのだが、今日はあいにくの雨。ランチメニューの、豚肩肉のロースト温野菜添え(名前は少し違ったかもしれない)を注文。パンはバイキングで、サラダ、スープ、デザートのケーキ、コーヒー付で、1200円。少し高めだが、味はとてもよかった。これまでに食べたミュージアムレストランの中では最高の味。肉と温野菜がおいしい。
 世界のタイル博物館。山本正之氏が常滑市に寄贈したもので、ラスター彩のタイルなど、世界各地のタイルコレクションを楽しめる。パネルの説明は文字が多くて、読むのが大変。2階には、タイル張りした小部屋もあり、タイルや建築関係の書籍を閲覧できるコーナーもある。
 無料の企画展示室と、陶楽工房の陶楽ギャラリーでは、西村知子展。「祝祭の陶磁・縁起まんだら」というのだが、ド派手さもここまでいくと面白い。サイン帳が置いてあったので、「いい作品ですね。購入したくなりました」と書いておいた。家に置いておくと、福の神が降臨しそうだ。
 「窯のある広場・資料館」、若い人たち数人のグループが、窯の内部(登録有形文化財)に入って、こういうのバーにしたらいいね、と話している。その周りと2階は、古便器コレクションの展示なのだった。“古便器収集家”の千羽他何之(たかし)氏のコレクションが中心で、「染付古便器」がたくさん展示されている。その展示手法がまたまたびっくりで、展示台やその壁面に便器が展示してあるのだが、ボットンの部分には、ちゃんと切り抜かれた暗い穴が開いている。確かに、便器の展示としては、これしかないだろうとは思うものの、リアルで、この2階部分をしげしげと眺めているのは、最初から最後まで私一人だった。江戸城本丸の御用場の樋箱(絵図をもとに復元)というのもあったし、岩崎邸トイレの写真パネルなどもあった。
 移築されたトンネル窯も内部に入って見学することができる(写真)。
 「陶楽工房」は、若い人や親子づれで賑わう。「土・どろんこ館」は1階は企画展示室と子ども向け体験コーナー、2階に靴を脱いで上がると、百土箱という引き出し展示(未完成)。引き出しの中には、ツバメの巣、ハチの巣、ダーウィンがらみのミミズ本など。全部開けてみようと思ったが半分くらいで挫折した。引き出し展示を全部見る人は稀だろう。体験ものは、個人的には、いつも通りの感想なのだった。
 INAXだから、どこもトイレは最新式のウォッシュレットで、特に「土・どろんこ館」のトイレはカラフルなタイルが張り詰められ、センサーでトイレの蓋も自動開閉する。
 「ものづくり工房」は企業のPRコーナー的な色彩が強い。工程見学通路は平日用のようだ。
 興味深かったのは、敷地の中央を、隣接する民家側から伸びる車道が横切っていること。博物館側の敷地が閉じられることなく、オープンになっていて、周囲に溶け込んでいる。次に行ったときには、民家の方へ歩いて行ってみようと思う。長くなるので、今日は止めておくが、周辺と合わせ、地域おこし的なテーマでもレポートが書けそうである。
 ミュージアムショップも充実。素焼きの植木鉢を買って帰りいたいが、さすがに・・・。小さなカラータイルなども安い値段で買うことができる。本のラインナップも楽しい。
 藤田洋三『世間遺産放浪記』(石風社、2007年4月30日初版!)、帰りの電車の中でパラパラめくって、のけぞってしまった。世界遺産のミスタイプではなく、「世間遺産」である。
 写真は、「トンネル窯」の内部(2007年4月22日撮影)。