図書館の世界

 学芸員社会教育主事とくると、気になるのはお隣の図書館の世界である。私の勤務先には、司書養成課程はないので、同僚に今どうなっているの?と尋ねることができない。学生・院生時代に図書館(情報)学の授業を聞いておけばよかったのだが、これもお隣だったのに、ほとんど没交渉で来てしまった。ということで、まずはネットで調べてみた。
 たどり着いた経路は忘れてしまったが、国立国会図書館が2006年6月20日から本格運用を始めた“Current Awareness Portal”を発見した。この中には、“カレントアウェアネス”の中からよく読まれた上位10本の記事の紹介もある。色々と興味深い記事が並んでいるが、その中に、大谷康晴さんの「公共図書館職員の養成教育と継続教育」という研究文献レビューがあって、現段階での司書養成にまつわる議論の動向が概観できるようになっている。(ネットで簡単にこういうレビューが読めてしまうところが、ちょっとまたクラっとするのだが。)その中に、

現在の公共図書館職員養成教育のニーズと問題点
司書の資格取得者と就職機会のアンバランス(司書の資格取得者が年間12,000人以上に対して,就職機会が30名程度というアンバランスが存在。)  (以下、省略:引用者)

という記述があった。さらに、大谷さんの記事から、LIPER(情報専門職の養成に向けた図書館情報学教育体制の再構築に関する総合的研究:Library and Information Profession and Education Renewal)という形で大規模な研究調査が行われた(2003−2005年度)ことを知った。
  LIPERの報告書を直接ご覧いただきたいが、「改革案の提言」の終わりのほうはこんな感じになっている。

司書養成教育を,質の保証を含めた大学全体の制度的枠組みの中で実施することは,司書養成カリキュラムの質の保証のみならず,担当教員の学内での基盤を確立するためにも重要である。ところが,本報告書の冒頭で指摘したように,司書課程が依拠するカリキュラムは図書館法5条1項2号に「大学を卒業した者で,大学において図書館に関する科目を履修したもの」の規定があるにもかかわらず,制度化されておらず,いわゆる省令科目と呼ばれる講習のカリキュラムを準用している。それぞれの大学が責任をもって司書課程を運営するための制度的基盤が弱いことが指摘される。
 しかしながらこの問題については種々議論したが,司書課程はこの枠組みのもとですでに50年以上の期間存続しており,現時点でラジカルな変革の必要性を確認することができず,今回は司書になるために学ぶべき領域について提言することにとどめた。むしろ,司書課程で学ぶ内容とそのレベルを,最新の図書館情報学の研究成果をもとにした高度なものに高める努力をすることの方が重要と考えられたからである。その際に,あとで述べる「図書館情報学検定試験」(仮称)を実施することが大きな効果をもつとの期待がある。制度的にはもとのままでも,この試験を導入することによって実質的に変化させる努力を行うものである。
 ただし,中長期的には法改正を含めた図書館員養成プログラム全体の見直しが必要であり,継続して検討を加えていくべきであろう。(以下省略:引用者)

 社会教育法、博物館法、図書館法と3つ並べたとき、博物館法改正の議論が資格の高度化という点では先頭を突っ走っているということだろうか?
 大谷さんのレビューの引用文献をたどっていくと、「情報専門職養成をめざした図書館情報学教育の再編成」(研究代表者:根本彰,略称LIPER2)が4年間の科研費交付を受けて2006年度から始まっているようだ。
 一方、文科省のもとでは、2006年度に、第二次の「これからの図書館の在り方検討協力者会議」が設置されていたことを知った。「平成18年度における司書養成に関する議論のまとめ」も公表されている。