『滝山コミューン一九七四』

 小田中さんのブログで目にしてから、気になっていたら、10日の朝日の書評欄でも大きく取り上げられていて、注文した本、原武史『滝山コミューン一九七四』(講談社、2007)が昨日、届いた。眠くもならずに、一気に読んでしまった。
 実物を読むまでは、なんとなく、「千里コミューン」とか「豊中コミューン」とか言えるかも、と思っていたが、原さんの本に出てくる滝山団地と私が子ども時代を過ごした千里ニュータウンは、町のつくりや住民構成が違っているようだ。その影響か、滝山ほどのコミューンは形成されなかったように思う。
 本書の存在を知るまで、そういう小学校や中学校時代の記憶は、封印して墓場まで持っていくものだと思っていたので、大変驚いた。原さんが小学校時代の日記等を保存されていることにも驚いたが、もう少し醒めた眼で、本書が、当時の教員や同級生からの聞き取りを交え、かつ関係者すべてを仮名で表現している方法論に関心を持った。
 また原さん自身は、末尾で、四方田犬彦を引用して、「実際に起きたこと」を再現するに際して、省略と強調が虚構を生み出すことを問い返している。
 いずれにせよ、自分自身の子ども時代を思い返しながら読むのに、面白い本になっていると思う。鉄道ネタは読み飛ばしてしまったが。