補助金と交付税

 昨日の続き。神野さんの『財政のしくみがわかる本』(岩波ジュニア文庫、2007)を読んでいて、気になったことがあった。

しかし、補助金をとっても「裏負担」があります。補助率は五〇%なので、地方自治体は自分であとの五〇%を負担しなくてはいけませんから、豊かな地方自治体はできても、貧しい地方自治体はできませんね。ところが、貧しくて裏負担ができない場合には、交付税が配られることになっています。だから、どんなに貧しい自治体でも、補助金をとれば、残りは地方税で足りなくても、交付税で保障されるため、仕事ができることになります。(162頁)

とあるので、補助金交付税の関係や補助金の定義が気になったのだ。それで、神野直彦『財政学 改訂版』(有斐閣、2007)を開いてみた。

中央政府から地方政府への財源の移転である財政移転は、一般には補助金と総称され、それは一般補助金と特定補助金に区分される。一般補助金とは地方政府が使途を限定されずに使用できる補助金であり、特定補助金とは使途が特定化されている補助金である。日本でいえば、地方交付税が一般補助金であり、国庫支出金が特定補助金である。(304−305頁)。

では、「国庫支出金」とは何かを岡本全勝『地方交付税 仕組と機能』(大蔵省印刷局 1995)で調べてみた。長いので要約すると、
1. a.国と地方の相互に利害のある事務、国が全部又は一部を負担する(義務教育費、生活保護費、老人医療費など)(地方財政法10条)
b.公共事業費、国が全部又は一部を負担する(道路工事、河川事業、林道事業、重要な都市計画事業、土地改良事業など)(地方財政法10条の2)
c.災害救助事業、公共施設の災害復旧事業など、一部を国が負担する(地方財政法10条の3)
以上のa〜cについて国が負担するのが、「国庫負担金」
2. 国の利害のみに関係のある事務(国会議員選挙、国勢調査等の国の統計調査など)に要する経費を国が負担するのが「国庫委託金」(地方財政法10条の4)
3. 国の負担が義務づけられてはいないが、国(各省庁)が一定の政策を進めるために、いわば奨励金として交付するものが、狭義の「国庫補助金
以上の「国庫負担金」「国庫委託金」「国庫補助金」を合わせて「国庫支出金」と呼ぶ。なお、「国庫支出金」を、広義の「国庫補助金」または「国庫補助負担金」とも呼ぶとのこと(30−31頁)。

なお、安部齊ほか『地方自治の現代用語<第二次改訂版>』(2005、学陽書房)でも、「国庫支出金」の項には、

国庫支出金は、地方財政法上、国庫負担金(第一○条から第一○条の三)、国庫委託金(第一○条の四)、国庫補助金(第一六条)の三つに分類される。(482頁)

とされている。それでは、国庫支出金と地方交付税の関係は、どうなっているのか。同書の「国庫負担金」の項目には、次のように書かれている。

地方財政法第一○条は次のように定める。(中略)ここに揚げられた事務は制限列挙であって、これ以外には国庫負担金はなく、(中略)。二〇〇四(平成十六)年現在で、主な国庫負担金は義務教育費国庫負担金、生活保護費国庫負担金、児童手当国庫負担金などがある。
 また、地方財政法第一○条の二には、建設事業に関する負担金が、第一○条の三には災害復旧事業の国庫負担金に係る経費が揚げられている。(中略)また第一一条の二では、この第一○条から第一○条の三までに規定する経費については、その地方公共団体負担分を地方交付税の計算に用いる財政需要額に算入することを義務づけている。(482−483頁)

では、狭義の「国庫補助金」(別名16条補助金というらしい)の地方負担分は財政需要額に算入されるのだろうか? いろいろと本をひっくり返してみたが、確証といえる部分が見つからない。日が暮れそうなので、この件は持ち越しだが、「補助裏」で検索をかけてみると、地方負担分を過疎債でまかなう、といったやり方も紹介されていたようだ。