大阪市の地方独立行政法人化問題(12・最終回)

 続きを。高橋さんの質問が続く。このあたりから、私も手を上げだしたが、高橋さんの質問がなかなか終わらないので、もーっつ!

高橋 市民としては直営が一番いい。行政が見なきゃいけないとしているものまで、民間へ移行(するというのはおかしい)。いくら赤字でも、存続されていくべきだ。地独でやるにしても、同じような体制(では)、同じような結果が起こると言われる。公金をつぎ込むしかないと思う。その対策は?


山條 独法という名がついているが、交付金ありき。努力して歳入をあげれば、独法として(自由に使えるというのは)バラ色の夢。一定の目標は必要。より自由度(が上がるというのが)制度づくりの重要な(ポイントだ)。説明不足を反省(している)。広報や教育普及が出来ていたのか?
 (その一方、博物館関係の集会)を開いて、市民に向かって問いかけをしたら、“あんたら専門家やろ、何を見せてくれるんや”と言われた。市民の希望に沿うのではなく、今後、何が見せられるか考えないと。


高橋 答えを想定して言った。大阪市の博物館は、他と比べて活発な活動をしている。市民の活動が博物館を継続的に支援しているのは、(大阪市だけで)他の地域にはない。(そのことをもっと)PRすべきではないか。多少、赤字があっても、公共性の対価、博物館を盛り上げてくれる人たち(に)踏み入って、スクラムを組むことが必要ではないか。


山條 ご紹介ありがとう。自然史博物館が代表的だが、それぞれの施設が市民との協働をしている。大学との協働(もあるが)、PR不足は否めない。人材育成は創造都市戦略の柱だ。今ある事業を創造都市戦略にあてはめることが可能だ。どこをどう強化していくか。


高橋 博物館制度改革、「これからの博物館の在り方に関する検討協力者会議」の委員は、6人中5人まで、(私が事務局をやっている)JMMAの会員や理事だ。博物館法を守って来なかったのは行政で、登録博物館になっていない博物館が多い。なぜか? メリットがなかったからだ。登録博物館になるより、(例えば)日本動物園水族館協会の加盟館になるほうが、メリットがあるくらいだ。どうでもよかった登録博物館に、公立博物館には登録博物館になるメリットがないのに、なぜ、なりたがるのか聞きたい。自由にやっていけばいいのに。何でこれから、捉われていくのか? なぜ、公立博物館が踏み込んでいこうとするのか?


高井 総務省は、法を盾に取っている。私たちは、その世界で認められて【この部分、メモ追いつかず】、法・施行令、そこのところを理解してもらって、政令の中に組み込んでいくのではないか。現行法との整合性、解決せざるを得ない。
 「新しい時代の博物館制度の在り方について」では、登録博物館のメリットを出さないと、インセンティブが働かない。登録博物館の独占使用は必要なことで、もっとメリットを出していかないといけないと思う。


高橋 大阪市大はどうなっているのか?


A 独法だ。


高橋 水道局の水道記念館や、市大の資料館(と)独法のミュージアムができるというのは、ねじれ現象になると言っている(のだが)。


A (大阪市大には)植物園(もある)。一旦、大阪市大に入るのか? 理屈だけ言えば、可能性はある。


高橋 三田の「人と自然の博物館」は兵庫県立大学と連携しているから、やろうと思えばできないことはない。


A できないことはないけど、正面玄関からやりたい。


瀧端 いただいた資料の中に、産経新聞7月16日の記事があるが、「首相官邸は、独法改革を『ゼロベースで見直す』としており」とあり、また渡辺行革担当相も「全独法の民営化・廃止を含め見直す方針」とある。一方、民主党マニフェストにも、原則独法廃止、「特殊法人独立行政法人、及びこれらに係わる特別会計は、原則廃止を前提にすべてゼロベースで見直し、民間として存続すべきものは民営化し、国としてどうしても必要なものは国が直接行います」と書かれている。与党も野党の大半も、独法見直しと言っていて、全体として独法が縮小の方向に向かっている。独法自体が過渡的な不安定なものではないのか?


山條 (その原則廃止論は緑資源機構の問題から出てきた)見直し論議だ。(我々は)そういう独法は目指していない。どこかに運営企画担当部を設け(るのは)余分にランニングコストとしてかかってくる。(7館を)まとめることによって、削減できる。トータルなコストパフォーマンスをどう上げていくのか。絵の描き方次第だ。余分に手間のかかるようなことは、大阪市の現状では(できない)。日博協の議論(や)、国の独法が完全否定されるのなら、我々として見つめていく必要がある。


瀧端 独法化のイニシャルコストについては、先ほど、高井さんが触れられたが、独法化した場合、理事・役員の人件費や、評価委員会の運営経費といったランニングコストが増え、継続的な財政負担になる。直営に比べてのメリットがあるのか? また課題として上げられた点も、別に独法にしなくても、行政内部の改革をすればいいことではないのか。


山條 管理委託の段階で、当時の直営との比較(があった)。直営に戻すのは公務員の身分の扱いが難しい。全く不可能であるとは考えていないが、よりメリットのある独法を目指す。


高橋 (大阪市は)ぜひ、独法でやってほしい。


司会 暖かい応援(・・・・)

ということで、共催研究会は時間切れとなった。後半は高橋さんに振り回された感もあるが、こうして入力していくと、今後、詰めるべき課題が断片的であるにせよ、いろいろ挙がってきたかと思う。
 初めの頃に、「説明責任」のところをゴチックにしたのは、山條さんの答え方に、いわゆるお役人的なものを感じたからである。山條さん自身が、説明責任という言葉を使われながら、それは説明責任の意味が私(たち)とは違ったようだ。最初に、え?と思ったのは、三重県のQ1さんが、「大阪市指定管理者制度を選んだ理由は?」と尋ねたことに対して、ずらした表面的な答えしかされなかった時だ。直営館をわざわざ指定管理に出した理由に対して誠実な答えがなされていない。
 そのあと、Q2さんの質問(なぜ、直営ではダメなのか)に対しても、納得のいく答えはなかったと思う。それで、司会の井上さんと、中村先生と、私の3人で、えーー?と首を90度に曲げていた。

 いきおい、会がはねてからは、「有能な公務員とは」で大いに盛り上がった。

 なお、質疑応答では省略したが、独法化のイニシャルコストも馬鹿にならないと思う。吉川論文では、「法人設立に伴う準備経費として、財務会計制度の整備、人事給与制度の整備、不動産評価等の出資財産の確定作業などの経費が相当多額に上ることがわかっている」とある。ミュージアムの場合はコレクションの評価作業が加わるのだとすれば、大変なことになるのではないだろうか。
 その他、懸念される事項として、「厳しい業績評価や成果主義の導入により、成果の出やすい業務に偏りがちになり、例えば試験研究機関において、技術指導や相談業務といった地道だが地元企業や農業者等にとって必要な業務が疎かになるおそれが指摘されている」と書かれている(221頁)。地方独立行政法人化を進めようとなさる方々は、独法のマイナス面も十分に考え、利用者の不安に正面から答えていただきたいものである