『京大式 フィールドワーク入門』

 京都大学大学院アジア・アフリカ地域研究研究科・京都大学東南アジア研究所編『京大式 フィールドワーク入門』(NTT出版、2006)を読み終わった。小川さやかさんの古着商もすごいが、安岡和宏さんの、ピグミーの人たちの2ヶ月半に及ぶ狩猟採集旅行に同行して、というものすごい。
 しかし、この本の趣旨は、そういう個別の調査内容・方法に驚くことではなく、いかに事例研究から、一般的な問題について考えるか、さらに、一般的なモデルを構築するか、を考えることにある。ちょっと不満なのは、仮説を立てて検証するという、文系では一番困難な問題が、『日本生態学会誌』掲載の論文を素材に論じられている点。それだったら、酒井さんの『これ論』を読めば事足りるので、私自身のもやもやは、全く解消されなかった。最終章の「一般的なモデルの構築に向けて」でも、素材がいきなりクリフォード・ギアツでは、ハードルの高さにたじろぐばかり。
 当面、心に残るのは、加藤剛さんのミニコラム「事例の選びかた」の中の次の一文。

事例村からの一般化を図るにあたっては、事例村はしかじかこのような村だといった静態的な特質に焦点を当てるのではなく、その動態的な特質、すなわち事例村の社会経済変化の過程に着目し、その過程の一般化を図ることである。(113頁)

 あとは、安渓遊地さんのコラム「地域と学問の板ばさみの中で」に書かれていること。安渓さんの文章は、いつものことながら気になって、「このあと実際にどうなったかは、〜をご覧下さい」というのを読むしかなさそうだ。