バッハアルプ湖畔で雨宿り(8月28日)

takibata2007-09-18

 この日も空は今一つ明るくならないが、フィルスト展望台からバッハアルプ湖を目指すことにした。7:52ミューレン発、ラウターブルンネン経由で8:34ウェンゲン着。昨日と同じLWMロープウェイに乗る。

乗り場に大きな犬を連れた人たちが4人。初老の男性が、「犬は嫌じゃないか?」と気にして声を掛けてきてくれる。「うちも飼っていますから」とか言っているうちに、珍しく(スイスの犬はめったにほえない)犬が私に向かってほえてくる。おじさんが渡してくれたビスケットをやると、すぐにほえなくなった。犬を連れたカップルはドイツ語圏で、もう一組のシニアカップルはフランス語圏から来たという。私がいるので、とりあえず会話は英語になる。「なんていう犬を飼っているんだ?」と聞かれて、思わず犬の名前を答えるが、「じゃなくって、犬の種類は?」ということらしい。「シバ・ドッグ」と答えるが、分からないようなので、「ジャパニーズ・ドッグ」と説明しておいた。おじさんは、「今日は雨が降るって言ってたよ」とのこと。

 犬と一緒にロープウェイに乗り込むと、今日の運転手さんは、あれ!あれ!と言って、切り立った崖にへばりついて草を食べている動物の群れ(ヤギか?)を教えてくれる。

 メンリッヒェン展望台に着くと、今度はすぐ先にあるGGMロープウェイ乗り場に行って、約30分かけて赤い小さな回りっぱなしの個室ロープウェイで、グルントに向かって山を下る。眼下は、草原に草を食む牛たちや点在する民家。すばらしい眺めだが、30分は長い。乗り放題パスがあるのをいいことに、単に移動の手段に使っているだけなのだ。途中、小雨が当たって、まずいなあと思う。

 グルントから1駅だけWAB登山鉄道に乗って、9:58グリンデルワルト着。10分ほど歩いて、フィルスト展望台行きBGFロープウェイに乗る。やはり30分ほどかかる個室タイプ。乗り場前のカフェレストランの植え込みの花が、手入れが行き届き、美しかった。山麓では、別荘地開発のような新築工事が行われていた。

 10:30ごろ、フィルスト展望台に着き、テラスからまたわあー!すごいと山々を眺めたあと、昼食を何も持ってこなかったことに気づいて、簡単な食事(スイス風サンドイッチとコーヒー)をすることにした。セルフサービスで、展望テラスで食べる。

 11:00頃から、バッハアルプ湖を目指して歩き始める。歩き出して間もなく、ぽつぽつと雨が降り始める。ざーっと来る前にと、レインウェア上下を着込んだ。迷ったが、前後の人たちも雨具をつけて歩き続けているので、そのまま進むことにした。雨の中だが、道々、花が咲き、小さな流れがあり、牛がいるところもあり、で、すばらしいハイキングコース。やがて、遠くで雷鳴。黒部ダムに行ったときに心配したことが的中してしまった。あの時、スイスに行くまでに、山で雷が鳴ったらどうしたらよいか調べておこうと思ったのだが、結局、時間がなくてそのままになっていた。風はそれほど強くないのだが、さしていた傘は、あっけなく骨が1本折れてしまった。

 小さな背の低い、避難小屋(Gummi Hutte)があった。私の少し前を歩いていたシニア・カップルは、この小屋の中に入っていった。一瞬、迷うが、小屋の中は、すでに人がいっぱいいて、初めて見る光景に戸惑い、思わず、そのまま先に進んでしまった。

 幸い、雨は降ったり止んだりで、それ以上ひどくはならず、雷鳴も止む。そして、湿地にワタスゲ風の植物が生えている場所を過ぎ、バッハアルプ湖が姿を現した。小さいのと大きいのと二つある。あいにくの天気で、湖の色はいま一つだが、とにかく無事、ここまで来られた。大きい湖の一番奥のベンチに腰掛けて休む。この横手の坂道を登って、さらに歩き続ける人もたくさんいたが、どこへ通じているのか、どうやって帰るのか検討していなかったので、ここで、引き返すことにした。

 ふたつの湖の間に簡易トイレがあって、思い切って入ってみたのだが、水洗でトイレットペーパーまでついているのに驚いた。スイスのトイレ事情は非常によい。しかし、排水はどうやって処理しているのだろうか?

 雨が強く降り出し、今度は、私も湖畔の避難小屋に入る。中はすでに人でいっぱいで、ベンチの上に丸まっていたインドの若い女性2人が席を勧めてくれる。両サイドの白人女性たちは、バケットをナイフで切り、タッパにつめたハムやチーズをバケットにはさんで、昼食を採り始める。

 小屋の奥では、ティーンの男の子たちが、薪を燃やしている。高校生ぐらいのグループなのだが、彼らはこういうのに慣れているかして、ごく自然に、小屋のそこここから薪を取り出し、火をつけ、女の子たちはデジカメで写真の撮り合いっこをしたり、ゲームをしたりしながら雨が止むのを待っている。避難小屋の軒下には、たくさんの薪が積み上げてあった。

 小ぶりになったので、外に出て、また歩き始める。雨で残念だったが、あんなふうに、ぎゅうづめで小屋に入るなど、初めての経験で、これはこれでよかったと思う。天気のいい日にまた来てみたい。

 14:00過ぎにはフィルスト展望台に戻り、コーヒーを飲んで展望台でくつろぎ、15:00ごろグリンデルワルトに戻った。15:30グリンデルワルト発のWAB登山鉄道で、クライネシャイデックへ出る。大雨。乗り換えの列車が遅れている。ホームいっぱいに人があふれる中、ユングフラウヨッホから列車が着き、日本人の団体客がどっと降りてくる。そして、このツアー客は、WAB登山鉄道すら、チャーターした特別列車で帰っていくのだった・・・

 約1時間かけて、WAB登山鉄道でラウターブルンネンに戻り、さらに雨あがりのミューレンに戻った。
 写真は、バッハアルプ湖(2007年8月28日撮影)