クンストミュージアム・ベルン(8月29日)

takibata2007-09-20

 ベルン山岳博物館を出たあとは、アーレ川に架かる橋を歩いて渡る。アーレ川は美しい川で、川の水の色が独特。今回のスイス旅行で、一番、思い出に残るのは、クレー・センターへ行くときにちらりと見たアーレ川とそこに架かる橋。(あとで気づいたのだが、そこは熊公園のある場所で、山岳博物館よりは北東になる。) ベルン中央駅からインターラーケン方面に走る鉄道からも、美しい川と橋を見ることができる。町並みのオレンジの屋根がそこに映える。
 さて、適当に見当をつけて旧市街を歩くうち、ベーレン広場に出た。生花や青果の市場が出てカラフルでにぎやか。花屋の露天に面したパスタ店でワインと昼食。

 それから、クンストミュージアム・ベルン(Kunstmuseum Bern)を目指した。地図を手に、何度も道を尋ねながら、ようやくたどり着く。文字案内がドイツ語だけで、よく分からず、ショップとカフェだと思って、受付を通らずに、ここって、無料?とか思いながら、階段を上って展示室に入る。他の入館者が胸にシールを貼っているので、あれ?と思うが、どこが受付かよく分からない。2階の展示をだいぶ見た頃、監視員さんに、声を掛けられる。しかし、全部ドイツ語なので、さっぱり分からない。あっち、と言ってるようなので、そっちへ行ったが結果的には違っていた。ただ、何となく居心地が悪いので、別の人に尋ねて、ようやく、最初にショップのレジだと思った場所が、受付なのだと分かった。スイスパスを持っているので、もちろん無料なのだが、ちゃんと無料入館者の(たぶん色分け)シールをくれるのだ。この2階は、近代美術が一通り揃っている、どちらかというと教科書的な展示。飛びぬけて印象的な作品というのはない。

 1階の階段脇の小部屋いっぱいに、SERGE SPITZERのRe/Search(1996/2002)という大掛かりな作品が展示されている。部屋中に張り巡らされた透明なチューブの中を2つのコマが行ったり来たりする作品。しばし、椅子に座って眺める。

 そこからつながる常設展コーナーは、14世紀以降の作品が、世紀ごとに1部屋割り当てられるような感じで並んでいる。観覧者はほとんどいないが、一人の青年が、1枚の絵の前で熱心に長時間メモかスケッチかをとっていた。

 ヨーロッパの美術館で戸惑うのは、この14世紀〜18世紀までの絵画に、どう向き合っていいか分からないことだ。スイスのコレクションは、特にキリスト磔刑をテーマにしたものが多く、かつ、左胸に大きな刺し傷、荊の冠から流れる血など、残酷な描写が多い。17世紀になると、鳥やウサギ(の死体)や果物などをこれまた生々しく描写した絵画。

 この手のパターンには随分慣れて来たが、日本でこういう派手な彩色のヨーロッパ絵画の現物を見る機会はほとんどない。日本で紹介される西洋絵画の偏りとか、専門家養成以外での美術史教育がほとんどなされていないことなども戸惑いの原因だろうが、ヨーロッパへ行ってみると、美術の成立史の部分での彼我の違いについて考えざるを得ない。

 地下だったと思うが、特別展示室があり、Paul Sennというフォト・ジャーナリストの回顧展のようなものをやっていた。ここは、シニアを中心に大勢の観覧者がいて、実に熱心に、写真や古い新聞記事などを見ている。Paul Sennの写真は、なかなか魅力的だ。

 こうして夕方近くまでベルンにいて、16:39分ベルン発のICでインターラーケン経由で、またミューレンに戻る。この日が、ミューレン4泊の最後の日だった。
 写真は、クンストミュージアム・ベルンの外観(2007年8月29日撮影)