ブリエンツ湖を渡る(8月30日)

takibata2007-09-21

 断崖絶壁の上で道路が通じておらず、車のない村、ミューレンを発つ日が来た。後半は雨ばかりで残念だったが、きれいで人の少ない村で、ウサギが道に出て来る。
 この日も雨で、野外は諦め、ブリエンツ湖を渡ることにした。ミューレン発8:22、ラウターブルンネン8:42着、8:50発、インターラーケン・オスト着9:16分。この間、鉄道は川に沿って走るが、連日の雨で増水した川は、自然堤防(というかここも線路すれすれに川が流れている)、灰白色で、氷河から流れてくる水だからだろうが、独特の色をしている。駅を降りてすぐの船乗り場へ行く。9:16発クルーズナンバー59、スイスパスで乗れる。ファーストクラスのスイスパスを買っていたので、初めて経験する豪華1等客船。入って階段を上がると、客室は食堂仕様になっていた。ブルーのクロスに、ドライフラワーが置かれたしゃれた食堂。先客で白人の若いカップルが朝食を頼んでいる。コーヒーを注文して一番舳先、窓際の席に座る。やがて出航。外は小雨で、たいへん寒い。薄手のカーディガンの上に、レインウェアを着てちょうどいいくらい。船室内もカーディガンで過ごす。やがて、韓国人のグループが現れ、外の舳先でずっと写真撮影をしている。

 あとから上がってきた白人のシニアカップル。男性は新聞を広げ、きれいな白髪の女性は、小さなスケッチブックを広げ、水彩絵の具を出して、スケッチに色を塗り始める。この船は、あちこちの小さな港に寄りながら、1時間20分かけてブリエンツ港に着く。

 この高齢の端正な、ブルーのカーディガンが似合う彼女は、スケッチブックの中に絵はがきを挟んでいる。絵葉書を見ながら、色を塗っているのだろうか。コンパクトな水彩絵の具セットも珍しく、こんな歳のとり方はいいなあと思いながらも、絵を描くことの意味を考えてしまうのだった。

 小雨が降ったり止んだりで、お天気がよければもっと素晴らしい湖水の色だろうとは思うものの、こんな天気でも十分に美しい。この水の色が何とも言えない。喩えて言うならば、熊野の瀞峡(奥瀞)に似た緑色。

 やがて、船はブリエンツに着く。雨なので、そのまま、ルツェルンに行くことにした。すぐに列車に接続した。ブリエンツ―ルツェルン間の車窓からは、Lungernseeという湖が見え、湖畔の光景と相俟って非常に美しい。車内のテーブルには、駅名と窓から見える湖の区間、右か左かが半円形で示され、湖が見える区間はブルーで彩色されていて、心憎い。
 写真は、ブリエンツ湖(2007年8月30日撮影)