スイス交通博物館(8月30日)

takibata2007-09-22

 ルツェルンに着いて荷物をコインロッカーに預け、雨の中、スイス交通博物館(Verkehrshaus der Schweiz)に向かった。バス停が駅前にたくさんあり、乗り場を探すのに一苦労したが、6、8、24番ならどれでも行くので、本数はたくさんある。スイスパスでバスも、入館料も無料になる。

 バス停のすぐ手前にチケット売り場とショップが並んでいる。鉄道の車両が展示室になったものがいくつか続いた後、大きなガラス張りの展示空間の中に、鉄道車両の数々が並ぶ。博物館は幾つかのセクションに分かれていて、航空機、宇宙、船舶、自動車、路面交通、バイクや自転車など、それぞれ棟が分かれている。実際にシミュレーションで動かせるものもあり、若い人たちに人気だ。広い館内の移動用に、子ども向けに自由に乗れるキックスケーターもあり、先生に引率されて来た子どもたちは、クラスぐるみ、キックスケーターで移動していた。家族連れが多いが、幅広い年齢層の人々が来館している。

 大きな食堂で昼食。同じフロアの窓際の席がウエイターのいるレストランになっていて、高齢のお客さんが食事を楽しんでいる。その他大勢は、生協食堂のような列に並ぶ。アルコール類ももちろんOKで、私も缶ビールを買った。たまたま座った席は、ちょうど館の女性スタッフがたくさん食事をしている場所で、にぎやかにおしゃべりをしている。ドイツ語が分かれば、興味津々だっただろうに残念。

 食後、ゆっくり館内を見て回る。航空機展示のところは、ガラス張りの高いぶち抜きの空間に飛行機やヘリコプターが吊るされ、ソウルの戦争記念館の屋内での兵器展示スペースと展示手法は良く似ている。スイス交通博物館の方が本家かと思うが、航空機の展示といえば、天井から吊るすというのはどこでも思いつくことかもしれない。スイス交通博物館は、平和利用の展示に限定していて、飛行船なども浮かんでいる。

 宇宙展示では、ガガーリンとか、アポロとかの、なつかしの写真パネルが並び、宇宙船の中で宇宙服に身を包んで横になっている(こういう形で発射するのだろうか)カプセルホテルのような小空間がたくさん再現されている。
 馬車のあるコーナーでは、道路舗装の変遷が展示されていて、縦長の引き出しを引き出すと、それぞれの時代の舗装材が引き出される仕組みになっている。引き出し展示の透明な縦バージョンが面白い(縦バージョンはV&Aにもあって、そちらが本家だろう)。

 船舶のコーナーでは、絵葉書の展示があり、興味深く見た。その階下には、大型豪華客船の食堂に模した大きなレストランがあり、実際に使用するのだろう、テーブルセッティングの真っ最中で、入り口からのぞいていたら、入ってください、とのことだった。

 庭には、ミニ蒸気機関車が走っていて、実際に高齢の運転手さんがお客を乗せて走る。その脇には、石炭くべを体験できるコーナーがあり、所定の時間で何キロの石炭をくべなさいという課題があり、若い男性が挑戦していた。

 面積的には一番広い鉄道コーナーの隅のほうには、大きなレリーフがあり、鉄道模型が走っている。交通博物館なので、模型が多いかと思ったが、動く模型はここだけだった。その階下では、立食パーティーの準備がされていて、やがてスーツ姿の一団が現れ、飲食を楽しんでいる。よく分からないのだが、察するに、パーティーの貸し会場や、おもてなしの場として、収益を上げたり、スポンサーを確保したりしているのではないだろうか。とにかく広いので、一角でそういうことをやっていても違和感がない。むしろ、賑わいの創出というべきか。

 同じ敷地内に、コミュニケーション棟もあり、中はティーン向けの体験展示の場になっている。テレビ録画撮りや、放送局ふうの機械の前にヘッドホンを付けて座ることができたり。鉄道の実物展示の部分はシニア男性が熱心に見ているし、船をリモコンで操作するプールは幼児に人気、という具合に、あらゆる年代層が楽しめるところがミソだろう。

 ショップで展示解説書や館の歴史を書いた本を探すが、そういうのはなくて、ゴッタルドトンネルの工事を扱った本など、鉄道マニア向けの本が中心だった。図版が多くて見るだけで楽しい“La Ligne du Gothard”(2007)という本と、スイス全土のミュージアムを網羅した“Schweizer Museumsfuhrer”(2006)を購入した。付録の地図を見ると、国土の北1/3に、ミュージアムが集中しているのがよくわかる。ドイツの影響なのだろうか。
 駅前にバスで戻り、屋根つきの木橋、カペル橋やシュプロイヤー橋を見て回る。ロイス川沿いにレストランやカフェのテラス席が並ぶおしゃれな町で、観光客が多い。
 写真は、スイス交通博物館。子どもたちに大人気のAero-Club-Simulator(2007年8月30日撮影)

【補足】館のHPを見たら、スイス交通博物館は、国内で最多入館者数を誇るミュージアムらしい。1959年開館、自己資金が90%(2005年)という異例の高さとも書いてある。私は入らなかったが、プラネタリウムIMAXシアターも併設している。