ピラトゥス山(8月31日)

takibata2007-09-23

 ルツェルンでは、レーベン広場のホテルに泊まったが、最寄のバス停で降りたあと、なかなか場所が分からず、親切な地元の女性が何度も道を指差し、教えてくれた。ドイツ語オンリーだと相手の話していることはまるで分からない。翌朝は、宿のすぐ前にバス停があるのを発見、Bahnhofと書いてあるバスならどれでも行くだろうと考えて、22番バスで駅に出た。この日は移動日で、南のルガーノに宿泊する予定。ただ、ルツェルンルガーノ間は特急で3時間半程度なので、世界一急勾配の山岳列車が走るというピラトゥス山に行くことにした。

 ルツェルン発8:07(Giswill行き)に乗る。車両は一部、低床になっている。アルプナッハシュタット着8:28、早朝なので、登山鉄道の駅にはお客さんは誰もいない。8:50に出る真っ赤な登山鉄道は、朝2番目の列車だが、下のほうには、飲み物のビンケースがたくさん積み込まれている。観光客は私一人で、一番前に乗りなさいと勧められ、次のボックスには、ハンガー付のクリーニングの包みを下げたスイス青年が乗り込んだ。「世界一急勾配の山岳列車」の中で漫画雑誌を読んでいる。山頂レストランのウェイターだろうか。他にも、絶景の中を上る途中、保線工事をしているおじさんが、窓から乗り込んで来たり、途中で飛び降りたりで、森林から岩場へと、トンネルをくぐりながら変わっていく眺めも素晴らしいが、この業務用と化した列車の有様のほうが印象に残っている。

 下界ではまずまずの天候だったし、登る道々でも展望が効いていたのが、最後の最後でガスに包まれる。ピラトゥス山頂駅(Pilatus Kulm)で降りると、真っ白なガスで何も見えず、怖いくらい寒い。ウェイター青年がガスの中に消えると、人の気配もなく、ホテル・ベルビューの丸い展望レストランも、女性一人がテーブルセッティングをしている様子が窓越しに見える。ほとんど視界が効かない中、せっかくここまで来たのだからと、ホテル・ベルビュー脇のEsel展望台(2,118m)に上る。細い道を手すりを頼りに、ガスの中を登っていく。斜面には今までのハイキングコースで見たのとほぼ同じような花が咲いている。山の中でこれだけの濃霧に包まれるからこそ、高山植物が育つ(高山植物しか生育できない)のかな、などと思う。頂上も視界ゼロに近い。Eselを降りて次は、ホテル・ピラトゥス・クルムの脇から上るOberhaupt展望台(2,106m)に上る。この頃から団体客が到着し始める。とにかく、高山植物以外は何も見えないので、早々に山を下ることにする。帰路は反対側のロープウェイを使う。これが10:30頃。

ピラトゥス山はドラゴンマークで統一した観光開発が行われていて、ロープウェイ側は、途中でアスレチック広場や、レストハウスや、最初あれは何だろうと目を凝らしたが、“Toboggan Run”という緑の牧草地斜面を突っ走る銀色のコース(この上をそりのようなものに乗って滑走する)が蛇行しているのだった。景観台無しとも思ったが、そもそも牧畜自体が人為的なものだし、スイス人のアドベンチャー好きも、野外の美しすぎる単調さ!から考えると、分からなくもない。

ロープウェイはクリエンスまでで、5分ほど標識に従って町まで下り、リンデ・ピラトゥスのバス停に出る。11:18発の1番バスに乗って12分ほどでルツェルンの駅に戻った。このバスは8分おきに出ている。登山列車とロープウェイはスイスパスで半額、バスは無料。
 写真は、ピラトゥス山頂手前、登山鉄道の車窓から見た地形。氷河が削り取った跡なのだろうか(2007年8月31日撮影)。