『砂漠化ってなんだろう』

 根本正之『砂漠化ってなんだろう』(岩波ジュニア新書、2007)を読んだ。砂漠そのものの説明と、砂漠以外の場所が砂漠化していったメカニズム、それに順応する形での緑化方法を、著者の主として中国での実験・観察の経験に基づいて述べた本。驚いたことも色々。

 例えば、内蒙古自治区で砂漠化の動態を調べた著者の、「わたしはこの場所で長いあいだ砂漠化の実態調査をしてきましたが、そこで砂漠化がすすんでいるのか、あるいは緑化作業によって砂漠化した土地が減少しているのか、判然としませんでした」という記述(14頁)。広大な面積の問題は、肉眼では判断しかねるということか。そこでランドサットデータを使った解析がなされている。また、「世界の砂漠化した土地面積は、現在のことろ量的にはひじょうに不正確にしか把握されていません」とのこと(82頁)。世の中には、未解明のことがたくさんあるものだ。

 2006年版『世界人口白書』に基づく「上位10カ国の人口」が掲載されているが、日本の人口は、第十位(126頁)。知らなかった。合計して世界人口の40%を占める中国・インドで、砂漠化が深刻な状態になっているとのこと。

 乾燥、半乾燥、乾燥半湿潤地域の砂漠化は、放牧地の使いすぎや耕作地へのおきかえと、伝統的な農業を他の方法(たとえばかんがい農業)に置き換えることに失敗したときにおこり、一方、湿潤地域の砂漠化は、過剰な伐採が原因となっている。また貧困や、経済・政治政策の失敗も、きわめて重要な問題になっている。

 砂漠の緑化と、砂漠化地域の緑化は異なり、砂漠の緑化は、他の地域から水を持ち込むため、水源を枯渇させ、塩害を発生させる。したがって、砂漠以外の地域が砂漠化していったメカニズムを知り、砂漠化する前の状態に戻す、あるいは、復元した緑を利用してその土地の生産力に見合った牧畜・農業をすることが大切と、著者は主張している。

 足尾銅山跡地の荒廃や、東京の植生調査も紹介され、盛りだくさんで論旨が追いにくいきらいはあるが、1冊で多くのことが学べる本だと思う。