『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』

 大町からの帰路は、小宮正安『愉悦の蒐集 ヴンダーカンマーの謎』(集英社新書ヴィジュアル版、2007)を読んだ。これは三中さんのHP(10月20日、22日)で知ったもの。
 博物館学系の本に慣れていると、違和感を覚える本。こちらの頭が、いかに近代的な価値観に染め上げられているかに気づかされる本とも言える。
 この本を読んでいくつか個人的な発見があった。「ハプスブルク家やそれを支持する諸侯のヴンダーカンマーでは、不倶戴天の敵であるオスマントルコのアイテムもさかんに集められた」の部分(63−64頁)。カールスルーエバーデン州立博物館で見たトルコグッズを思い浮かべた。
 もう一つは、ローマの「キルヒャー博物館が世界最初期の公共博物館だった」という記述。「キルヒャー博物館」は、「万人に開放されていた」と小宮さんは記述している。キルヒャーは1602〜80年まで生存していたらしいので、随分古い(127−131頁)。クンストミュージアム・バーゼル(1661〜)と同時期か・・・
 最後は、ナポレオンがヴンダーカンマーを標的にしたという話(209−210頁)。
 固定観念から自由になれば、こういうものの見方もできるんだな〜と思う部分、それと、ヨーロッパの博物館って、こういう要素を残しているよな〜と思う部分と、そして日本の博物館の特殊性を同時に思い浮かべる。