六本木クロッシング2007(森美術館)

 完全に風邪。頭の中も朦朧。でも、六本木クロッシング2007がどんなに楽しかったかを。
 まず、立石大河亞さんの富士山シリーズ。リバーシブルになったのとか、「ミクロ富士」に見入ってしまった。私自身の記憶があいまいになってしまっているが、東屋の中で富士山の盆景を眺める人、それが何重にもなっている不思議な絵。
 できやよいさんの「とぶ」。できやよい18才、と書いてあって、彼女が18才のときの作品なのだろうか。あれ、ここにじんでいるよ、あれっ、指紋がついている、とか思ったら、彼女の作品は、指をスタンプにして押した上から描き込んでいった作品だそうだ。彼女のインタビュー記事を教材に使ったことがあるが、作品をじかに見るのは今回が初めて。指紋など、実物を見ないと気づかないわけだ。
 榎忠さんのRPM-1200.シルエットが物見台の壁面に映し出されるのが美しい。
 田中信行さんのFlow.巨大な漆塗りが壁面に取り付けられている。漆でなぜ、こんなものを造ってしまうのかと思う。
 東恩納裕一さんの一群の作品。蛍光灯を使った作品なのだが、壁が白と黒のストライプで、丸い蛍光灯を黒のリボンで結んでいる。可愛らしいが、喪をイメージさせる。蛍光灯をつけて、リボンが焦げてこないのか、気になって仕方がなかった。もう一つは、大小さまざまな円形の蛍光灯のコードを束ねて、そこにリボンを結んだ作品。これもアイデア勝ち。鏡をいっぱい集めて造った球体も面白い。
 吉村芳生さんのドローイング新聞。昭和51年11月6日の毎日新聞を選んだことに何か、意味があるのだろうか。榎さん同様、すでに雑誌(美術手帖12月号)で詳しく紹介されているから、私が書くまでもないが、やはり見ると呆れる。365日分の自画像のスケッチ。見ていると、手抜き(?)の日もあって、シンプルな線描で終わっている日がある。そんなのを見つけると、ちょっとほっとする。
 次のコーナーは、田中偉一郎さん。田中さんの作品が出ているというのが、森美術館に出かけた最大の理由。田中ファンなのだ。で、やっぱりゲラゲラ笑った。「ハト命名」。何だろうと思って画面を見ていると、公園に集まったドバトの動画が一瞬止まって、「宇野初枝」とか「岡本常夫」「堀江りん」「及川烈」とか、いかにもありそうな名前が次々出てくる。本当にそういうふうに見えてしまうのが不思議。どうしてこんなことが思い付けるのか・・・。隣は、「クラシックカラオケ」、(間奏20秒)とか出てくる。その横が、「こけしいきいきマリオネット」と「こけしいきいき」。そんなこと、普通、しないでしょう・・・。反対側の壁面には、「刺身拓本」として「マグロ」「マダイ」。さらに反対側には、「テーブル・ビー」の画像と、ただのテーブルが一個。ご丁寧にも、「テーブル・ビーをプレイしたい方は、お近くの監視員までお尋ね下さい」の札が。
 中西信洋さんの「レイヤードローイング 日の出」。半透明の写真が天井からずらっと吊り下げられて、映し出された景色が少しずつ変わっていく。壁面の小さな作品群、#001〜081.スライドを重ねた形で、中身は、犬毛、クリップ、定規など。覗き込むと美しい。
 エンライトメントの「マインドプリーツ」。小部屋の中で映像。見ていて不思議だったのは、光源が画面の中にあるように感じたこと。普通、映像作品は、後ろ上とか、小部屋の中ほどにプロジェクターがあるから、小部屋の中を見回したが、光源は見当たらない。やはり画面の中から出ているのか。画面から、小部屋の方へ、一瞬光がぱあっと広がる瞬間があり、出口付近のこの暗室で、一人しみじみ、この展覧会を見に来たことの幸福に浸った。
 チェルフィッチュの映像作品3本。劇団だそうだが、何、これ?と見入ってしまった。変なのだけど、その変さが、今まで見たことのない変さ。で、お芝居の上映風景も写し込まれているのだが、こういう劇を見に来るお客さんがちゃんといるんだな〜と、若い人たちの文化の奥の深さを知った。
 最後に、PC上でお気に入りの作品一つを選ぶコーナーがあった。迷ったが、できさんとか田中さんとか、既知の作家・作品ではなくて、初めて知ったという意味も込めて、エンライトメントの「マインドプリーツ」に投票しておいた。
 来館者は、平日の夜ということもあってか、若い人たちが多かった。この時間帯でも来館者が多いのは、東京ならではか。