「今、問われる 文化施設の使命とは」(10)

 続きを。

原 加藤さんは『あいだ』の抜刷を配って下さったが、(芦屋市立美術博物館の問題は)実際に新聞にも大きく報道された経緯もある。状況について、詳しくお話いただきたい。


加藤 現状は困っている。まず、芦屋市自体のビジョンのなさ。どういうことを(NPOへの)業務委託で求めるか? 聞いても(きちんとした)返事が返って来ない。人を入れることなのか? お金を稼ぐことなのか? はっきりした答えがない状態だ。
 二点目として、NPOのAMMに雇用されているが、AMMの理事自体がミッションが不明確。自分たちで考えようという姿勢もない。芦屋市は指定管理者となるところを探していたが、どこも受けるところがない。回避のために、受け皿として、急遽つくったのがAMM(だが、理事の方々は)それぞれ職業があって、急場(しのぎにすぎない)。(理事の方々は)美術についてご存知の方ではない。運営のことも詳しくない。ミュージアムマネジメントとうたいながら、マネジメントのこと知らない。(したがって)かろうじて(業務委託が)続いている状態だが、AMM内部でミッションをつくれない。
 第三に、(業務委託は)1年契約で、事業計画が立てられない。以前、2005年度は、5,000万円あったのが、今は1/3の1,200万円しかない。お金を、どこかから助成金をとって来ようにも、申請するのは1年契約の中では難しい。来年、(契約が)更新されるか分からない(ので)、事実上できない。
 第四に、芦屋市立美術博物館が、木ノ下さんのところと違うのは、収蔵品があるということだ。戦後、前衛美術運動(をおこした)具体美術協会の作品を収集・保存・展示している。(具体の)資料の活用について、悩んでいる。2006年3月の段階で、4人いた美術担当のうち、3人がやめて、私だけが残っている状態だ。(作品の)管理や、海外からの問い合わせ、貸し出しや(調査依頼が)多い。問い合わせは(年間)50件くらいあるが、1/3は海外からで、込み入った内容のものが多い。果たして公の機関で(これでいいのか)、(収蔵品を)後世に継承していかなければならない。個人がやっているという状態が許されるのか、(それを)認めていることが問題だ。


原 コレクションを持つ美術館(の問題をお話いただいた)。3者のお話を聞いて、小林先生からコメントいただきたい。


小林 どういうふうにコメントしていいか困る。神戸アートビレッジセンターは、今までやってきたあとに指定管理者制度がたまたまついて来たので、やりやすくなったんだろうなと思う。夏に北海道で、アートNPO第一号の「ふらの演劇工房」(の話を聞いたが)、指定管理者制度でアートNPOに委託して【管理を代行させて】いる。富良野市は、指定管理者制度を導入しようとは思っていなかったが、アートNPOからせっついて、指定管理者にしてくれ(と申し出たとのことだ)。制度が後押しになっている。役割分担が明確になる。(市からの)出向職員が大きな顔をして分かっていない(より)、そういう人がいなくなって、効率的に運営できるようになった(という話だ)。どう役割分担(を)明確にしていけば、リスク分担が明確になるのか。
 川端さんのところが面白いのは、よくそういうことが考えられるなという、アイデアマン(のところ)。アーティストの活躍の場の必要性、ご実家が清掃の関係(のお仕事をされているとのことだが)、こういうのが出てくると、本当に面白いな(と思う)。
 マイナス面もある。芦屋はマイナス面だ。これまでうまく出来ていたところを(業務委託に出すというのは)立場がぜんぜん違う。私は(指定管理者)制度を悪いものとは思っていない。文化ホールは使われていない。(指定管理者制度は)劇団などに、開かれた制度になっている。コレクションを持っている美術館には、研究(という)ミッションがある。加藤さんの置かれている状況は悲惨だ。かわいそうというのはコメントではないが、考えられない状況だ。芦屋市立美術博物館の問題は、自治体そのものの問題だ。


加藤 指定管理者制度が悪いとは全く思っていない。制度が適正に活用されないのが(問題だ)。芦屋の場合は、一部の人たちが、具体を好きではなく、《会場拍手》10月31日に行政改革実施計画(が出され)、経費削減のために(市が)再建団体になるから、という横暴な計画で、休館、あるいは売却と言われてしまい、具体が好きでない(人たちが)指定管理者制度を言い訳にして、どうにか・・・《会場拍手》