「今、問われる 文化施設の使命とは」(13)

 続きを。

原 芦屋市立美術博物館の窮状を。(具体のコレクションは、)世界的にも評価され、価値が高い。(館運営に)どこがイニシアチブを取っていくのか? これまでのお話を聞いて、小林先生からご意見を。

小林 加藤さんが、(具体の作品の管理を)私一人でやってもいいのかな?と言われたが、やりたい人、やるべきと思っている人がやるべき。大変だと思うが、使命感を持って(やっていただきたい)。身も蓋もない言い方だが、芦屋市だけ(に理解を)求めてもダメ。芦屋市民、NPO以外に、(具体の)意味を理解させていくこと。限られた芦屋市の中だけで理解させてもダメだ(と思う)。広がったネットワークを作っていかないといけない。本当の意味で理解してくれる人をNPO理事に換えていく。
 役割分担という意味で、長崎歴史文化博物館に行ってきた。すごく感心したことは、(指定管理者に)乃村工藝社が採用されているが、初めてなので、手探りで行われている。長崎県の方が積極的にサポートしている。指定管理者制度を【学芸部門にまで】導入した最初の美術館【博物館】で、行政も関わってサービスを提供している。1週間に1度、行政担当者と乃村のスタッフがミーティングを行っている。監視されていて、やりにくくないですか?と聞くと、分からないこと、判断に迷うことがある(ので)、ミーティングを持てる時間は意義がある、とのことだった。行政が見放していない。(管理の)代行をお願いしている責任がある。行政が持っていないといけない責任がある。芦屋のケースは、市を変えていくことがいいことなのか、分からない。

加藤 AMMの理事の件は、ここでは言えない。より強力な理事に入っていただくことは、内部では考えている。美術の学芸員は1人になったが、2006年に、1人、学芸の方が入って、普及(活動を担当してくれている)。ネックは収蔵品についてで、市に責任があるのは当然(だと思う)。そこがないのが問題だ。
 芦屋以外のところにネットワークを広げて、というのは、休館、閉館が(報道されたときに)、皆さんに協力していただいて、閉館、休館を免れた。
 具体は、DOCUMENTA12にも、田中敦子さんの作品が出されている。海外では関心が強く、具体関係で(調査や貸し出しを)言われている。ただ、外からと同時に、市の中をどうするか、常に考えていかないといけない。今まで、考えなさすぎたという反省もある。

DOCUMENTA12の分厚い本は、クンストハレ・バーゼルで買って帰ったので、さっそく本を開いてみた。田中敦子さんの作品は、“Calendar”(ca.1954)と“Electric Dress”(1956)の二点が図版で載っていた。“Electric Dress”は、丸い電球や、チューブ型電球を頭のてっぺんから足元まで全身にまとっていて、なかなか壮観。私が生まれる前に、こういうことを試みた女性がいたというのは、嬉しいことだ。