指定管理料

 手元にある文献で、「指定管理料」がどう扱われているかを調べてみた。以下、太字は私がつけたもの。

1. 成田頼明監修『指定管理者制度のすべて 制度詳解と実務の手引』(第一法規、2005年)

Q36 指定にあたり、債務負担行為を設定する必要はありますか。
A 指定管理者が管理を行うための経費としては、次の3通りが考えられるところです。
1 全て利用料金で賄う。
2 全て設置者たる地方公共団体からの支出金で賄う。
3 一部を利用料金で、残りを地方公共団体からの支出金で賄う。
 上記の2及び3の場合、地方公共団体から指定管理者に対して支出金を拠出することとなることから、後年度以降の支出を義務付けることとなる当該行為は自治法第214条に規定する「債務を負担する行為」に該当します。したがって、後年度にわたって地方公共団体から指定管理者に対して支出金を拠出することとなる場合には、債務負担行為を設定する必要があると考えられます。(89頁)

この本では、Q31、Q32でも、「債務負担行為の設定」を指定管理者制度導入の流れの中に位置づけ、議会の議決事項としている。これが総務省の見解だと思われる。

2. 官民連携プロジェクト研究会編著『Q&A 実践・指定管理者制度 公募と応募の争点』(ぎょうせい、2006年)

(26)協定書作成の視点
 今後は、軒並み、大規模施設や複数施設の一括募集などが目白押しに控えており、PFI事業並みの協定書の締結を民間事業者側が求めてくることは十分予想される。特に、指定管理者となった民間事業者にとって、協定事項は極めて大きな関心事であり、これから、協定書作成の議論が本格化していくものと思われる。(77頁)

(22)利用料金制
・・・経費の仕組みは、今のところ、地方自治体側の一方的な条件設定であり指定管理者制度において、相互が納得する経費システムが構築されるためには、まだなおしばらく模索が必要である。・・・

事例 青森県営スケート場指定管理者募集要項(平成17年6月)より
5 指定管理料
(2)指定管理料の算定は以下によることとする。
ア 経常的経費に係る指定管理料
(イ) 県から指定管理者に支払う指定管理料は、当初想定されなかった特別な事情が発生した場合を除くほか、変更しない。
イ 備品購入、修繕工事に係る指定管理料
 施設管理運営に必要な備品の取得及び施設の修繕工事に係る経費(1件50万円以下の小破修繕に係る経費を除く)については、施設等の状況と県の財政状況を勘案して指定管理者と協議の上、上記の経常的経費に係る指定管理料とは別に会計年度ごとに決定する。(66−70頁)

(36)具体的なリスクの想定
(イ)行政側の変更や情報ミス(条例変更、行政方針変更、情報不足、書類ミス等)
3 地方自治体職員の多くは、2〜3年の短期任期で異動する場合が多いため、協定書作成時の担当者が変わり、協定書の解釈に温度差が生じることも考えられる。条文化されなかった詳細な事項でも覚書として記録に残しておくことを奨励したい。(93−102頁)

事例 「葛飾区地域産業振興会指定管理者公募要項」(平成17年5月)抄
 事業の中止・延期に関するリスク
 区の債務不履行、当該サービスが不要となった場合:リスク分担 区
(1) 事業の継続が困難となった場合の措置
2 当事者の責めに帰すことのできない事由の場合
 不可抗力等、区及び指定管理者双方の責めに帰すことのできない事由により、業務の継続が困難になった場合は、事業継続の可否について両者で協議するものとします。(以下、略)(94−99頁)

「指定管理者が破産した場合」というのは、いろいろな文献等に書かれているが、自治体が破産した(寸前?)場合という想定は、なかなか見つからない。ちなみに、大災害に見舞われたのでもない限り、自治体の財政破綻は「不可抗力」とも、「当事者の責めに帰すことができない事由」とも思えない。


付記:「大阪府立弥生文化博物館、大阪府立近つ飛鳥博物館及び大阪府立近つ飛鳥風土記の丘の管理運営業務基本協定書」には、以下のように書かれている。なお、(甲)は大阪府、(乙)は財団法人大阪府文化財センター。

(乙による協定解除)
第27条 乙は、次の各号のいずれかに該当するときは、本協定を解除することができる。
(1)正当な理由なく、甲が本業務内容を変更したとき。
(2)正当な理由なく、甲が本業務を廃止したとき。
(3)前二号に掲げるもののほか、甲がこの協定に違反し、その違反により乙が本業務を達することができないと認められるとき。
(4)甲が、前条の規定による事由なくして協定の解除を申し出たとき。
2 前項の規定により協定を解除したときは、甲はそれによって生じた乙の損害を賠償しなければならない。その賠償額は甲乙協議して定める。(以下、略)

また、リスク分担表には、次の項目がある。

事業の中止・延期  
府教委の責めによる事業の遅延・中止 負担者:府教委
不可抗力による事業の遅延・中止 負担者:協議事項


ところで、ドーンセンターの方では、ドーンセンター売却反対の署名が始まった。「当初は13日に知事に提出という予定でしたが、15日に提出、記者会見という段取りに変更になったそうです」とのこと。
大阪府指定管理者制度導入施設一覧(平成19年4月1日現在)はこちら↓
http://web.pref.osaka.jp/gyokaku/shiteikanrisha_ichiran.pdf