指定管理者制度と債務負担行為

 指定管理者制度と、自治体側の債務負担行為について、具体例を上げて言及している文献としては、(財)地域創造の報告書『公立文化施設における政策評価等のあり方に関する調査研究−指定管理者制度を中心に−』の資料編「第2部 事例調査 ヒアリング記録」がある。昔にダウンロードしたのを引っ張り出してきて、読み返してみた。以下、関連部分を抜粋する。

三重県総合文化センター
三重県生活部文化振興室
委託金額 平成17年度、18年度は上限として債務負担行為を設定、正式な金額は年度協定書の中で決定する。次年度以降は、県の財政状況の影響を受け、事業は減少もありえるだろう。(97頁)
(財)三重県文化振興事業団
2年度目、3年度目も債務負担行為で上限が設定されている。管理予算は積算であるため、複数年担保されているが、事業費予算については上限金額とみなされている。管理者側から見れば事業費も複数年担保されておれば理想的である。(103頁)


島根県環境生活部文化振興課
委託料は1本。債務負担行為を設定する。
委託料は、平成16年度当初予算を基に積算した。ただし、人件費は、標準人件費で積み上げて算出した。人件費は現在より若干下がることになる。(112頁)


磯子区民文化センター
横浜市
指定管理者の指定にあたり、区としては「債務負担行為は設定しない」という方針。しかし指定管理者を受ける事業者の立場に立てば、何らかの保障はあったほうが安心材料になるので、今後債務負担の設定について検討していきたい。
5年間の基本協定の中に、具体的な金額は年度毎に協定で設定すると書き込み、公募要領、指定管理者からの事業計画書など一式を添付することで、債務負担行為を設定しなくても、指定管理者に対する保障はできると考える。(126頁)


金沢市都市政策部国際文化課
指定期間 5年が目安。債務負担行為は、市の方針で設定しない。協定書を結び、指定管理料は年度ごとに設定する。(135−136頁)
(財)金沢芸術創造財団
金沢21世紀美術館の指定期間は5年間。まだ1年間ランニングしていない状況で積算し、予算を出したが、光熱費、人件費がかさみ、すでに積算額とかなりの落差が出ている状況。5年でやっと落ち着くというところであり、新設施設で5年という指定期間は短いと考える。
債務負担行為は市の方針で設定されていない。金額は協定書で2年分提示、年度協定で具体的な金額を定め、締結している。
金沢21世紀美術館の1年間の委託料は約7億円。費用を積算して市に出すが、(市の)査定は、収入を多く見込んで支出部分をカットする傾向が強い。また、いずれの部門でも経費は毎年10%カットとなっており、今後ますます状況は厳しくなることが考えられる。(144頁)


まつもと市民芸術館
松本市総務部文化振興課
1年と15日間が指定期間。
委託費の6億円については、補正予算で債務負担行為の措置をとった。
特に期間を3〜5年とした場合、20〜30億円という規模の債務負担が発生し、そのことに後年まで縛られるということに対する抵抗感が強かった。
仮に次の4年間を指定期間にしようとすると、そこでまた24億円という債務負担行為の問題が発生してしまう。複数年の債務負担で市の支出が固定されているのはいかがなものか、との雰囲気は感じる。(150−151頁)

 なお、債務負担行為については、以下のサイトの説明が分かりやすかった。
http://www.pref.tottori.lg.jp/dd.aspx?menuid=32012鳥取県
http://www.nikkenren.com/pfi_yougo/page/sa03.html(社会資本委員会PFI部会)