「地方財政問題と男女共同参画を考える」

 「地方財政男女共同参画を考える講演会」実行委員会主催、「地方財政問題と男女共同参画を考える」講演会に行ってきた。講師は神野直彦先生。
 この講演会の存在は、好きやねんドーンセンターの会のHPで知った。http://www.sukiyanen-dc.com/?p=233 でも、授業日なので、諦めていた。
 5月28日に開催された「今こそ、専門分野の司書・学芸員の“専門”を問う〜図書館・博物館における専門スタッフの役割を考える集い〜」http://d.hatena.ne.jp/takibata/20080529 に参加した折、この神野先生の講演会のチラシが配られたので、ばったり十数年ぶりに再開したI先生に、「この講演会、どなたが企画されたんでしょうね?」と言ったら、「私よ」と言われて、びっくりした。以下、I先生と私との会話。


私「行きたいけど、授業があって・・・」
I「神野先生はとてもお忙しい方だから、神野先生のご都合に合わせて、私も自分の授業、休講にするのよ。」
私「神野先生の岩波ジュニア新書を読んだんですけど、国債チャラにしたらいいって書いてあったんですけど」http://d.hatena.ne.jp/takibata/20070710
I「だから、神野先生を呼んだのよ。国債持ってるのは銀行なんだから」
私「・・・・」


悩んだ私は、先日、神野先生編著『三位一体改革地方税財政』の共著者Z先生に、この疑問をぶつけてみた。
私「神野先生の岩波ジュニア新書を読んだら、国債チャラにしたらいいって書いてあったんですけど」
Z「そうできたら、一番いいでしょうね」
私「国債って誰が持っているんですか?」
Z「銀行と、郵便局と、生保だけど、お金を預けているのは国民だね。」
私「じゃあ、チャラになったら、困りますね?」
Z「誰も賛成しないだろうね」


そこで、今日は、神野先生ご本人に、ぜひ伺ってみようと思って、(それだけではないが)、神野先生の生講義を聴く機会はめったにないだろうからと、学生さんたちに謝って、出掛けたのである。
ご講演の冒頭、神野先生は、網膜剥離を患っていると話された。研究者で視力に不自由するのは、この上もない苦痛だろうが、そんな苦労を感じさせないような、ユーモラスな、次々と話題が沸いてくるお話しぶりだった。一流の学者とは、こういう話しっぷりをされるのかと思った。
今日の講演会は、参加者が158人、集まったカンパが3万3千いくらかと、司会の方が報告されていた。Q&Aの時間に、手を上げる人が多く、私も毎回手を上げたが、残念ながら順番は回ってこなかった。それはそれで、他の方とのQ&Aが聞けたので、よかったのだが。(ちなみに、神野先生は、税率100%の国債保有税をかけたら、若干の経済的混乱は起きるかもしれないが・・・と冗談めかして言われていた)
とりあえず、今日のお話の中で、国債・公債に関するところだけをピックアップすると、以下のような内容だった。

・ ジュニア新書の131−137頁にかけての説明と同様のお話。
・ 市町村の地方債は、市場では調達していない。政府のお金、財政投融資や縁故債で調達している(ここで郵便貯金の歴史の説明:『財政学 改訂版』345頁「郵便貯金の原点」と同様のお話)。
大阪府はロットが大きい。府債は、金融市場でファイナンスしている。

結局、私自身の疑問はすっきりはしない。神野先生の『財政学 改訂版』16章に「オプションとしての公債と公債原則」が書かれている。「公債原則論では古典派が公債の起債を排撃し、ドイツ正統派財政学が建設公債原則を唱えている。この建設公債原則は、日本の財政法で制度化されている。ケインズ派は建設公債原則のように経費の使途を基準にするのではなく、景気基準での起債原則を唱えた」(224頁)。これらの原則が、日本の財政の中で、どのように組み合わせながら使われてきたのか、「失われた10年」と重ね合わせて思いを馳せる。

今日の神野先生のお話の中では、調整債と「決算上の赤字」のお話が面白かった。これはまた明日にでも(と、宿題ばかりが増えていく・・・)。最近、講義を理解するための予習・復習が全く追いついていません。